【最強の戦士】第6話 盾の乙女
盾の乙女は、戦場で戦うだけの女戦士ではない。死に逝く同胞を神々の館に見送るのが一番大切な役目だ。
もし、手の施しようがないのなら……盾の乙女がその手で、少しでも楽に神々の館に逝かせなければならない。
「……ラゲルナ……悪いな」
背中に受けた槍傷は右の胸を貫いていた。胸から喉から口に逆流する血を吐き出しなら……アルミウスは最後の言葉を口にする。
「お前の手で……神々の館へ逝かせて欲しい……んだ」
アルミウスを逝かせてから……わたしは、戦場で人を殺せなくなった。
戦えない、落ちこぼれの盾の乙女となってしまう。だから、故郷を逃げ出して、この地へ流れてきたんだ。
「お止めなさい!」
強い口調で、女の声がした。エロイーズと紹介された女魔法使いが、わたしの眼前に割って入って来た。女魔法使いの胸が、わたしの胸を押す距離である。
「もう、戦いは決しました。これ以上、攻める必要はないはずです!」
黒いローブを着た赤毛の女だ。わたしの口の高さに眸があるから、女としても少し小柄か。年下に見えるが、目つきは鋭く、気が強そうだ。
「握手を求めてきた相手に斬り掛かるなんて、卑劣です!」
不意打ちで仕掛けてくるような輩を相手にしている。握手に応じて右手を預けようものなら、その隙に襲ってくるのを警戒するのは当然ではないか。
わたしが女魔法使いを退かそうと、胸座を掴むと憤怒にその形相が変わる。
女魔法使いは、わたしの手を払って素早く数歩下がり、懐から取り出した呪符を投げてきた。羊皮紙に魔力を封じ込めたもので、触れた途端に光か炎か雷で相手の動きを止める魔法だろう。
しかし、呪符は何も起こせずにヒラヒラと地面に落ちる。憤怒に歪んでいた顔が驚愕に変わっている。コロコロと表情が変わる女だ。
わたしはブローガルから奪ったロングソードを握り、ラウルの方を向く。
「面白いかい?」
わたしの問いに答えず、ラウルは左脚に力を込めて立ち上がろうとする。真上からロングソードを振り下ろした。
「ぎゃあぁぁぁ!」
ラウルの右の顔面を一閃……これで右眸は潰した。そして横薙ぎに振るって、左大腿部の筋を断つ。ラウルは突っ伏し、呻き声をあげた。
戦いを楽しむような下司は、もう二度と戦えない身体にしておく。後は両腕の筋を断ち斬っておこうか。
「ま……待て!」
ブローガルの声だ。
「あんたの腕を試せと命じたのは、俺だ。やるなら……俺をやれ」
ヨロヨロと立ち上がり、予備のショートソードとナイフを地面に投げた。
「俺は抵抗しない。その代わり、ラウルにはもう手を出さないでくれ」




