【深淵の呪術】第14話 蟲毒
受付係の女が語る通りなら、ノアールが町ではなく森に引き寄せられたのが納得できる。
神殿に『命の石』とか言うものがあろうがなかろうが関係ない。願いや思い込めて殺し合いが行われるなら、それは強力な呪いになる。
獣や蟲同士を共食いさせて呪いを増幅する『蟲毒』を、人でやっているようなものだ。醜悪にして凶悪な呪術と言えるだろう。
そして、呪いに魔は集まるのだ。
この、ファルジの町の魔道具から流れ出す魔も、噂が事実であればファルージュの森に吸い寄せられているはずだ。
「あの、ラゲルナさん?」
散らばっていた点が一本の線に繋がった気がして、思わず憶測を巡らすことに没頭していた。
「ああ、ごめん。ちゃんと聞いてるよ」
これは、普通に森の探索ではない。誰かを生き返らせるための願い事を賭けた生き残り遊戯となるかも知れないな。
町の事情を知らない余所者のわたし達が、不用心に参加したら大火傷をするところだった。受付係の女には感謝しないといけないな。
ギルドの建物に到着すると、直ぐにギルド長が現れた。
「シャルロットを助けてくれたことには感謝するぞ」
魔狼の件での御礼を言われてた。
昨日と同じ間仕切りのある席で話を聞くことになるのだが、いきなり同席していた受付係の女がギルド長に頭を下げていた。
「そうか。あの噂を、二人に伝えたのか」
何をわざわざ謝るんだ?……と思ったが「死者を生き返らせる魔法」の噂は、余所者には黙っていなければならないものだったらしい。
ギルド長は、小さくため息をついてわたし達の方へ向き直った。
「ギルド長としては、裏のとれていない噂話を伝えるつもりはなかった。それに、噂には尾鰭がつく。余所者が『お宝』目当てに押し寄せて来れば、更に面倒なことになるやも知れんからな」
確かに、そんな魔法の噂を聞きつけたら、王都からでもならず者みたいな冒険者どもが押し寄せて来るだろう。本当に、凄惨な生き残り遊戯が展開することになるな。
「でも、探索に入ったパーティは還ってこないのだろう?」
今現在、森に入った冒険者の間で生き残り遊戯が行われている可能性もある。
「ふむ」
ギルド長は、胸の前で腕を組むと小さく顎で頷いた。
「だからこそ、疑心暗鬼を助長するような情報は排除したかったのだ。これから森に入るパーティには、先行した三つのパーティの消息を調べる役もして貰わねばならないからな」
まあ、どうでもいいか。森に入るまでのお膳立てをしてくれるなら、その先が探索だろうと生き残り遊戯だろうと関係ない。




