【深淵の呪術】第13話 ヤバい仕事?
「そしたら、ギルド長も『シャルロットを助けてくれた恩人なら、融通を利かせないとならないな』って言ってくれたんです。それで、イレギュラーな編成でよければ都合をつけてもいいって話になったんですよ」
どんな風に[融通を利かせてくれる]つもりか確認するために、もう一度ギルドに向かうことにする。
……何とか、ノアールが女将さんを襲うのは止められたな。
わたしとノアールは受付係の女と一緒に、大通りを昨日と逆方向にギルドへ向かって歩き始める。
「あんたは、古代魔法の呪詛を読めるのかい?」
ノアールのローブに編まれた呪詛が、実は古代魔法だと気付く者は少ない。気付くとしたら、並以上の知識を持つ魔法使いだけだ。
「まっさかぁ! そんな知識あるわけないじゃないですか。ギルド長は、昔は町でも有名な魔法使いだったんですよ。それで、今でも古代魔法の研究をやってるんです。たまにお手伝いしたりするから、見分けがつく程度に憶えました」
「ふーん」
ヤクトの町と太い繋がりがある場所で、古代魔法の研究をやっている元魔法使い……ノアールが天啓を受けていなければ、関わらずに通り過ぎたい相手だな。そう思ったら、気の抜けた返事が漏れてしまう。
「もしかして、嫌な予感とか虫の知らせとか……感じてますか?」
前を歩いていた受付係の女が不意に振り返り、ガシッとわたしの手を両手で握る。
「な、なに?」
「遠慮しないで、断ってくれていいんですよ! あたしやギルド長の顔を立てるとか、一切気にしないで下さい!」
あれ?……何か、受付係の女の目が真剣だぞ。
「ファルージュの森へ探索に行った冒険者は、誰も還ってこないんです! 森の中に『すごい魔物がいる』とか『冒険者同士が、殺し合いをやってる』なんて噂もあります。そんな仕事受けなくていいんですよ!」
……冒険者同士が、殺し合いをやってる?
「あたしだって、命の恩人にヤバい仕事を回したくないんです!」
宿の女将さんは「ファルージュの森の深淵には、死者を蘇らせる魔法が封じられた『命の石』を奉る神殿がある」と言ったが、その話にはまだ先があった。
「その『命の石』で、生き返らせることができる命は限られていて……それを争って、森の奥で冒険者同士で殺し合っているんだって……」
お宝を奪い合っての殺し合いなら、有り得る話だな。
「最後に勝ち残って『甦る命』を手にした者は、生き返った人と何処かに逃げてしまうから、それで誰も還って来ない……噂ですけど」
依頼人の代官には報告できないから、逃げるしかないわけか。




