【深淵の呪術】第6話 ファルージュの森
「お待たせしました」
受付係の女が、年配の男を伴って戻って来た。男の方がテーブルの席に座ると、受付係が間仕切りの間をカーテンで閉じる。それから、男の隣の椅子に腰掛けた。
「私はガリアラスと言う。元は冒険者パーティで魔法使いをやっていたが、引退後はこうしてギルドの事務仕事をしている。まあ、一応はここの代表者の肩書きでな」
四十代の後半くらいか。姿勢が良く歩き方もキビキビとしていて、短く切り詰めた金髪と鋭い目元が特徴的な男だった。
「ファルージュの森の探索の件だったな」
「ああ、そうなんだけど……ギルド長が直々に説明するほど特別な仕事かい?」
特別な仕事であれば、地元の冒険者が優先的に仕事を得るだろう。わたしのような流れ者の冒険者には回ってこないのが普通だ。それでも、話だけでも聞いておきたいと思う。
仕事の内容は、ファルージュの森の入口を警護していた衛兵の言った通りだ。代官であるザックス卿直々の依頼で、冒険者ギルドがパーティを編成して「森に入る」許可証を出している。
「パーティを組まないと駄目なのかい?」
「……ふむ」
ギルド長は目を伏せて頷き、受付係の女はバツが悪そうにギルド長を見る。
「実は、もう何人もの冒険者が森に入って消息を絶っている。厄介な魔物がいるのかも知れんし、何かの迷宮があってそこに迷い込んだのかも知れん。誰も還ってこないのだから,全くの謎だ。それで、専門的な知識を持つ者にチームを組んで探索に行って貰いたいのだ」
「今も、3つのパーティが探索に森に入っているのですが……帰還の予定日を過ぎても、戻って来ていないんです」
受付係が申し訳なさそうに言う。更に、3つにパーティが消息を絶ってしまったのかも知れない……と言うことか。
「無許可で森に入ると、殺されることになるとも言われたけど……本当かい?」
「まあ、半分は正しいな。もしも、森で許可証を持っていない者を見つけたら、拘束するよう指示が出ている。もしも、抵抗するなら『殺して良い』ことになっている」
「何で、そんな物騒なことに……?」
「森の奥には『古い神殿がある』と言われているのだ。それが事実なら、今では失われた魔法や技術が眠っているやも知れん。それを盗掘者にくれてやるわけにはいかないだろう」
なるほど……そう言うことか。失われた魔法や技術は、領主クラスの権力が取り合いをするほど貴重なものだ。それ故に金にもなる。危険を冒しても、盗掘しにくる連中も山ほどいるな。
敢えてパーティで参加させて、互いに監視させる意味もあるか。




