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異形の美女と道連れとなって、神々の忘れ物を拾い集めます  作者: 星羽昴
Ep:深淵の呪術

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【深淵の呪術】第2話 脇道を進む

 ファルジの町を示す立て看板には左方向の矢印があったが、ノアールは迷うことなく右の細い脇道へ入った。

 道の両脇の草は伸び放題で、道としては手入れされていない。なのに、人の足や馬の蹄で踏み固められている。小さな荷台車と思われる轍もあった。


「魔物がいそうかい?」


 先を歩くノアールに問いかけてみた。人の足跡には、鎖帷子チェーンメイルの足底も混じっていた。武装した者達が行き来しているのが窺える。


「いえ。そんな気配はありません」


「ふーん」


 魔物討伐の兵や冒険者ではないのか。いや、待て……この先にあるのが魔物でないのなら、何がノアールを呼び寄せているんだ?

 魔物よりも厄介なモノを想像して、少し背筋が寒くなってしまう。

 ノアールの足が止まり、わたしの方を振り向いた。


「大丈夫です。ラゲルナ様は、わたしが守りますから」


 わたしの不安が伝わったのだろうか。ノアールの、美しい女の顔が朗らかに微笑んでいた。


「ああ、当てにしてるよ」


 相手が魔物だろうと人だろうと、戦ったらノアールは最強だ。

 ちなみに、わたしはノアールから『嫁』認定されている。ノアールも「嫁を守るのは、夫の務め」と認識しているので、一応わたしは最強の存在に守られていることになる。



 ノアールとわたしの進んでいる細い道は、緩い傾斜で下っている。左側には、いつの間にか岩肌が高くそびえ、右側は逆に濃い緑の森を見下ろしている。どうやら広い盆地の淵部分を下っているようだ。

 緩い勾配を更に下ると、先の方に丸太を組んだ柵が見えてきた。その柵の前には二つの人影がある。

 一人が、わたし達の方へ歩いて来た。腰にはロングソードを下げて、簡素な革鎧レザーメイルを着込んでいる。町の衛兵だな。


「おい、止まれ」


 野太い声が、わたしとノアールの方へ飛んできた。そんなことは意に介さず進もうとするノアールの肩に手をかける。


「ファルジの町の衛兵みたいだ。話を聞いてみようよ」


「はい。わかりました」


 先を急ぎたいノアールは不満そうだが、わたしの言うことには従順だ。渋々ながらも、足を止めた。海賊の剣(ヴァイキングソード)に右手をかけながら、わたしがノアールの前に出る。

 わたしの警戒に気付いた衛兵は、革鎧レザーメイルの胸元を指差した。先程の立て看板にあった紋章が描かれている。ファルジの町を示す紋章だ。


「俺たちは、ファルジの町に代官として派遣されているザックス卿に仕える衛兵だ。この先のファルージュの森は、ザックス卿の許可のない者は通せないことになっている」


 え……それじゃあ、代官と話を付けないと先に進めないのか?

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