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異形の美女と道連れとなって、神々の忘れ物を拾い集めます  作者: 星羽昴
Ep:深淵の呪術

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【深淵の呪術】第1話 東?へ向かいます!

「東へ向かいます!」


 ノアールの、真っ直ぐに伸ばした左手の指先は、西の方角を指している。

 北と南はちゃんと憶えたノアールだが、東と西はまだあやふやだ。「日が昇るのが東で、日が沈むのが西だよ」と教えてあるのだが、太陽が南中している昼時ではその知識も役に立たない。


あっち(・・・)で、いいんだね」


「はい!」


 元気に、そしてきっぱりとした返事を確認して、わたしは『西』に向かって歩き始める。荷物を背負ったノアールは、慌ててわたしを追い越して先に立つ。

 一応、自分が先導しているつもりになっているのだ。

 わたしとノアールの二人旅では、ノアールが荷物持ちの役目だ。何故かと言えば、ノアールの方が圧倒的に力持ちだからである。



 女ながら剣使いのわたしに対して、ノアールは華奢である。長い黒髪に射干玉の如き黒い眸、整った顔にある鮮血色の唇が白い肌を際立たせている。凄い美女だし、性格も素直で従順、多少ズレた部分があっても気配りもできる相棒だ。


「この方向に何があるんだい?」


「さあ? わかりません」


 予想通りの答えに、わたしは小さくため息を漏らす。

 ノアールは見た目こそ「華奢な美女」だが、既に数百年を生きている人外の存在である。一人でずっと森を彷徨いながら、魔を喰らってきたのだ。人と関わらないで存在してきたのだから、ズレているのも仕方ない。

 本人は「神の使徒」を自称しているが、ノアールを知る存在モノも「神の忘れ物を拾い集めるモノ」と呼んでいたな。

 時折、頭の中に「神の命令」もしくは「天啓」が響くらしい。使徒であるノアールは、その命令や天啓には逆らえないようだ。

 そして……そこへ向かうと「とんでもない魔物」や「とんでもない事件」に遭遇し、その度にわたしが死にかける。

 剣の腕はそれなりでも、わたしはあくまで普通の人で、不死身のノアールとは違う。


「この方向だと……ファルジの町に向かうことになるね」


 ファルジの町は、特別大きな町ではないが辺境伯の直轄地で、首都であるヤクトの町から代官が派遣されているはずだ。


「ヤクトの町と繋がっているのなら、目立つことはしたくないねえ」


 ノアールは、ヤクトの町の魔法使いから目を付けられている。ヤクトの町から派遣された代官に、ノアールのことを気付かれると面倒なことになるかも知れない。


「はい。わたしは、ラゲルナ様の言いつけを守って温和おとなしくしていますね」


「ああ、そうしておくれ」


 人外が「温和おとなしく」しても、人にとって「温和おとなし」いとは限らないのだが……まあ、それをノアールに説明するのは意味がない。

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