【最強の戦士】第1話 祝勝会
「おーい、こっちのテーブルに酒がないぞ!」
「酒だ、酒だ。一気に持って来ておけ!」
飯屋は、冒険者たちの上機嫌な大声で騒がしい。まだ日没前だと言うのに、酒の臭いが充満している感がある。
「おい、あんたも飲めよ。そっちの別嬪さんもな」
相当に「デキ上がった」のがわかる赤ら顔で、わたしとノアールのいるテーブルに冒険者の1人が近寄ってきた。わたし達のテーブルに酒の器がないのに気付く。
「おーい、こっちに酒を2つ追加だ!」
その声に、奥にいた飯屋の主人が手を上げて応じるのが見えた。
「いや、いらないよ。さっきの注文もなかったことにしておいておくれ」
飯屋の主人が唖然とした顔をしたが、関係ない。わたしはノアールを連れて飯屋を出ることにする。
「おいおい、つれないだろう」
赤ら顔の冒険者は一瞬だけ残念そうにしたが、すぐに他の女冒険者のところへ擦り寄って酒を酌み交わしている。
……要は、女とお近づきになりたかっただけか。
まあ、わたしも一応女だし、ノアールは人外でも見かけは絶世の美人だからな。小さくため息をついて、わたしとノアールは飯屋を出て宿屋へ向かうことにした。
ここはフェルトの町。
少し前から町に近い森に魔狼の群れが住み着いて、街道を往来する旅人や商人が襲われるようになった。その魔狼退治のために、他の町の冒険者ギルドから冒険者が多数派遣されて、つい先ほど群れのリーダー格の魔狼が退治されたのだ。
ついに大物を倒した……と言うことで、町に集まっている冒険者たちが祝勝会で景気よく盛り上がっているわけである。
一時期は住民も逃げ出して廃村のようになっていたと言うが、森の魔物が減ったことで住民も戻り少し活気も戻りつつあるようだ。
群れのリーダー格が退治されたのなら、これから更に魔物の数は減って、町は盛り返すだろう。
宿屋に戻ったら、女将さんが驚いていた。
わたし達はたまたま町を訪れただけの冒険者だったが、成り行きで今日の魔物討伐には参戦したのだ。その祝勝会だから「飲めや歌えや」を楽しんで来ると思っていたらしい。
「わたしは酒を飲まないからさ。夕飯を食いそびれてしまったから、何か用意してくれるとありがたいんだけど」
酒が苦手……と言ったら、女将さんも納得してくれた。女将さんは「簡単なもので良ければ」と笑顔で頷いて、少しの後に2人分の夕食を部屋に運んでくれた。
「ああ……言っておくべきだったか」
相棒のノアールは、人外だから食事もしない。この2人分の夕食は、わたし1人で食べないといけない。




