【癒やしの聖女】第19話 そして、贖い
結局……修道女の要望を、町の住民たちは受け入れた。
町の男たちが森を探索することになり、修道女から「報酬を受け取ってしまった」わたし達も参加しないとならない雰囲気だった。
「魔蝙蝠は退治したけど、他も魔物がいるかも知れない。探索に出る住民たちの護衛を兼ねて、道案内するさ」
「ありがとうございます」
ならず者を追い出したことで、住民たちからも感謝されている。食料も貰えることになったから、アフターサービスだな。
探索を始めて、例のならず者は直ぐに見つかった。怪我で動けなかったこともあるが、本人は「仲間の救出」を当てにして現場近くを離れないようにしていたらしい。
町を追い出された二人も、あの現場から逃げ出した一人も……仲間だった者からは見捨てられて、虐げてきた住民たちに助けられたのは皮肉である。
助けられた生き残りは、修道女の治療を受けた後で、町長の告発を受けて近隣の町から派遣された市警に引き渡された。
思いの外、この町に長く留まることになったのはノアールのせいだ。
乳鉢と乳棒を貰ったノアールは、修道女から「磨り潰すと効能が上がる」薬草や「煎じる方が効能が上がる」薬草などに関する知識を教えて貰っていた。
教会の医療部門が蓄積してきた知識は、ノアールの「生活の知恵」を巧みに補間するものだったらしく、大喜びで教えを受けていた。
修道女の方も、他の土地で「一人でも多くの怪我人や病人が助かるなら」と快くノアールの我が儘に付き合ってくれている。
ノアールの知識欲が一段落するまでに、わたしも旅に必要な保存食や日用品を揃え終えていた。やっと旅に戻る日が来る。
「貴女方の旅に祝福がありますよう、祈っております」
見送ってくれる修道女は言った。
「生憎と『祝福』が得られる行いをする旅じゃなくてね」
これは皮肉のつもりだ。
自分のみならず他人も魔物狩りの囮にしたり、脅しのために首を落としたりと……およそ人の道に悖る行いはしていない。修道女のような敬虔な者から見たら、わたし達も悪人の部類だろう。
「いいえ」
修道女は、穏やかに微笑んだ。しかし、わたしの言葉をきっぱりとした口調で否定する。
「貴女方は、成すべき事をなさったのです。それは、何ら恥じる事でも、負い目を感じるべき事でもありません」
……負い目?
「貴女の行いが、人の道や神の教えに対しての罪であるのなら……その贖いのために、私が祈ります。貴女は迷わずに成すべき事を行って下さい」
……贖い?
「貴女の罪は、私が購います。それが、人を守る力を持たない私の務めです」




