【癒やしの聖女】第18話 義務?
暫くして、教会に救出された町長と若者の代表らしき者がやって来る。
自称・冒険者のならず者が町に来たのは2ヶ月前。その2ヶ月の間、町長はずっと屋敷の倉庫に監禁されていたようだ。
痩せ衰えた町長は、町の若者に肩を支えられて辛うじて歩けると言った感じだった。休んでいれば良いと思うが、町長として「事態を把握しないといけない」使命感があるらしい。
町長が監禁されている間の、ならず者連中の悪行は、修道女や町の住民たちが伝えた。安易に冒険者を迎え入れてしまったのは、町長の失策と言えるだろうな。
わたしの方は、魔蝙蝠を待ち伏せる野宿で襲撃されたことを伝えた。
襲撃してきたのはリーダーを含めた5人。そのうち3人は死亡し、一人は傷を負ったまま草むらに置いてきた。後の一人は途中で逃亡したが、この町に戻っていないから別の土地へ逃げたのだろう。
「お待ち下さい……それでは、森には傷を負ったままの冒険者が一人残されているのですか?」
わたしの話を聞き咎めたのは修道女だ。
「この町を出て行った二人には、一応伝えたさ。あの二人が助けるかも知れないし、先に逃げた奴が戻って助けているかも知れない」
「でも……仲間だからと助けるような方々でしょうか」
ほう、意外と人を見る目は確かだな。形勢が不利と思ったら、リーダーでも見捨てて逃げ出す連中である。怪我をして、足手纏いになりそうな仲間をわざわざ助けるとは到底思えない。
「シスター・エルネス。まさか……その冒険者を助けるべきと言われますか?」
町長の肩を支えて来た若者が、不満の声を上げた。当然だな。町の住民は、皆あの連中の悪行に苦しめられて来た。森の中で、野垂れ死にするなら「ざまあ見ろ」と言うのが本音だろう。しかし。
「はい」
修道女は、何時になく強い口調で肯定した。
「怪我を負い、身動きのできない者が森に取り残されているのです。私には、その怪我を治療する義務があります」
「シスター・エルネス、教会で医術を修めた貴女のお気持ちは理解できるつもりだ。しかし……私は町長として、彼らの行いを中央に告発するつもりでいる。死に値する罪人に対して、そのような義務を負う必要はないではないか」
そう言えば、あのリーダーが「金貨十枚分くらいの金を住民から巻き上げた」と言っていたっけ。それだけで死刑になってもおかしくない罪だな。
「例え、罪の贖いとして死を賜るとしても、人が見捨てられて良いわけではありません。誰からも見捨てられる……そんな絶望だけは、私は何者にも味わって欲しくありません」




