【癒やしの聖女】第15話 後始末
「一体、アンタらは何者だ? たった二人で、あのデカい魔蝙蝠を退治しちまうとはな」
「蛇を操る魔法なんて、初めて見たぞ」
「あの鉤爪のような手甲は、どこで手に入れた呪具だ?」
ならず者連中には、ノアールが何をやったかは理解できていない。口元が裂けた顔は見えなかっただろうし、蛇も鉤爪も「珍しい魔法」と考えているようだ。
「それで、オレらをどうするつもりだ? まさか、ここに置き去りにするつもりじゃねえよな」
魔蝙蝠が退治されたことで、連中は胸を撫で下ろしている。囮役としての仕事が終わって、解放されると思っているのだろう。
「言われた通り、オレらは町を出て行く。けどな……流石に、アンタにやられたこの身体じゃ無理ってもんだ。怪我の治療くらいは、町で受けさせてくれ」
リーダーの言葉は、お願いのような文面だが、それを言い放つ口調は結構強めだ。町を出て行くことが、怪我の治療との交換条件になると思っているのか。それとも、怪我の治療くらいは当たり前であると信じてるのか。
これまで善人だけを相手にして、その善意に付け込んで悪事を尽くしてきた者の典型だな。
自分よりも悪人はいない……と思い込んでいる。
「ノアール。此奴の首を引き千切りな」
「はい」
ノアールが、ローブから鉤爪を覗かせるのを見て、リーダーは顔色を変えた。
「おい、町を出て行くっていってるじゃねえか! 何で、オレを殺すんだ? オレの命令がなけりゃあ……町に残った奴らが、町長と家族を皆殺しにしちまうぞ!」
ああ、そうだな。これから、町長の家に見張り役で残った奴らと交渉しないとならないんだ。ならず者は全部で7人だった……そのうち5人が、ここに来たから残りは二人。この場を逃げ出した奴が戻っていても、せいぜい三人だ。
その三人の前に、リーダーの首を転がせば、交渉も手間がかからなくていい。
いつ「掌を返すかも知れない」奴に交渉させるより、ずっと確実だ。
「う……うわぁぁぁぁ!」
「助けてくれー!」
ノアールが、リーダーに躙り寄っている間に、リーダーの後ろの方にいた二人が這いつくばったまま逃げ出そうとした。
ノアールの視線が、そちらに向いた。その二人を含む景色が、モザイク状にズレて、次の瞬間に白く発光する。
空間を操作するノアールは、繋いだ空間を引き裂くことで「そこにあるモノ」をも引き裂くことができる。
二人のならず者の身体は、幾重にも引き裂かれていた。叫び声も、呻き声も上げる暇なく……おそらく、二人は死の瞬間も気付かなかっただろう。




