【癒やしの聖女】第13話 助けておくれ!
魔蝙蝠の爪が地上に届く寸前に、ノアールが転移で現れる。ノアールの右の鉤爪が、魔蝙蝠の背中に穴を穿った。
ギィイ!
ギィイ!
やたらと甲高い魔蝙蝠の悲鳴が、周囲に響く。空へ逃れようとする魔蝙蝠の右脚が、鉤爪に鷲掴みされた。
改めて見ると、身の丈はノアールの倍くらいだ。広げた翼は、大人5人が手を広げて並ぶくらいの横幅がある。
バサバサと翼を大きく震わせ、藻掻きながらもノアールごとジリジリと上昇している。ノアールの両足が地面から離れそうになる刹那、草群の景色が真横にズレて発光した。
……ギャア……ギャア
……ギャア……ギャア
魔蝙蝠の胴体が、腰の辺りで真っ二つに切断された。腰から上の上半身がドサリと地面に落ちる際には、草くらがグラリと揺れた気がする。
ノアールは、右腕を高く上げて魔蝙蝠の下半身を逆さに持ち上げていた。
ノアールの左手が、黒のローブの前を開いて左脚を露出する。左脚の蛇たちが、一斉に魔蝙蝠の下半身に喰らい付いた。
蛇に喰われ、黒い砂を吹き出しなら消えてゆく魔蝙蝠……それを眺めるノアールは、満足そうに上唇を舐め上げる。
……ギャア……ギャア
……ギャア……ギャア
あれ? 心なしか、魔蝙蝠の呻き声が、さっきより大きくなった気がする。刹那、わたしの肩口を熱風が吹いた。
「え? えぇ!」
下半身を失い上半身だけになった魔蝙蝠が、翼の爪で地面を這って、わたしの方へ向かっているのだ。大きく開いた口は、間違いなくわたしの正面にある。
「な……なんで、こっちに来るんだよ!」
苦し紛れか、滅茶苦茶に炎の弾を吐き出している。土妖精から貰ったサーコートを着ているから、軌道が捻じ曲げられて直撃されずに済んでいるだけだ。こんなの、躱しようがない!
……ギャア……ギャア
……ギャア……ギャア
魔蝙蝠は、地面を這って更にわたしとの距離を詰めてくる。
海賊の剣に両手を添えて、一気に地面を蹴って魔蝙蝠の左肩口に斬り掛かる。
「し、しまったぁ!」
逃げれば良かったのに、条件反射で身体が動いてしまったのだ。海賊の剣は、魔蝙蝠の左肩から胸の中程までを斬り裂いた。相手が人であれば心臓を真っ二つにしているはず……しかし、この相手は魔物だ。最初から心臓が動いてない!
鉄に触れた傷から黒い砂が噴き出す。それでも魔蝙蝠は、翼の爪でわたしの海賊の剣を握った。逃がさないつもりか?
魔蝙蝠の頭は、ちょうどわたしの鼻先にある。その大きな頭にある口が開かれる。
おい!
このまま炎の弾を吐かれたら、わたしも頭でくらう羽目になるぞ!
「ノアール! 助けておくれ!」




