【癒やしの聖女】第11話 聴戒
「確かに、オレらは悪党だ。だけどな、最初からこんな阿漕なマネをしていたわけじゃねえんだ」
火が通った鱒に齧り付いていると、ならず者のリーダーが昔話を始めた。
「オレは、西の方にある小さな町の生まれだ。ガキの頃から腕っ節には自信があって、それを活かせる冒険者を目指してヤクトの町に出て行ったんだ。これでも、辺境伯領でナンバーワンの冒険者パーティ『ヤクトの剣』で主要メンバーだったんだぜ。剣の腕なら『ヤクトの剣』でも1、2を争えるくらいだったんだ」
焼いた鱒は、まあまあだが……一晩経っている分、身がパサついて味も落ちてる気がした。もう少し塩を多くした方が良かったな。
「冒険者パーティと言っても『ヤクトの剣』は、結構な大所帯でな。正規メンバーは多くはないが、裏方や見習いを入れたら20人を越えるんだ。当然、大人数が集まれば派閥ができる。オレは、リーダーのブローガルとはソリが合わなかった」
ああ、思い出した。そう言えば『ヤクトの剣』のリーダーは、ブローガルと言う名前だったな。
「ヤクトの町で、商人が襲われて金を奪われる事件があった。ブローガルは、オレをその事件の犯人だと決めつけやがった。それでヤクトの町を追放処分になり、パーティからも除名処分ってわけよ。今の仲間は、その時に『ブローガルの処分に納得できない』からとオレについて来てくれた連中だ」
唐突に、人徳アピールか?
「こう見えても,オレはバカが付くような正直者でな。ブローガルの奴に、見事に罠に嵌められちまったんだよ。だけどな、オレを信じてついて来てくれた仲間を食わせなきゃならないんだ。それで……」
バカは間違いないと思うが、正直者と言うのは絶対に嘘だな。仲間と言う連中だって、隙があれば「リーダーを見捨てて」一人で逃げ出そうとしてる。このリーダーの人望でついて来てるわけではないのは明らかだ。
仮に……今の話が本当だったとしても、わたしがやることは変わらない。
北の海賊戦士が、命のやり取りを仕掛けられたのだ。わたしが死ぬか、こいつらが死ぬかの二つに一つ。
晴天の中、不意に足下が影になる……何かが、わたしの頭上高くを横切ったのだ。反射的に、空を見上げる。
翼を広げたモノが、青い空で円を描くように旋回している。
「うわぁぁぁぁぁ」
「助けてくれぇー」
鑪の側に転がる二人のならず者が悲鳴を上げる。しかし、リーダーは歯を噛みしめるだけで、声を上げない程度には肝が据わっている。
さて。後は魔蝙蝠に降りて来て貰うだけだな。




