2話
「なるほど、俺が研究している古代人と魔石に宿っていたという古代人は違うようだな、超古代人とでも呼ぶべきか・・・」
落ち着きを取り戻すと、セサルに質問攻めにされたが、特に動揺することなく先ほどよりも感情の起伏なく質問に答えれていた。
セサルは忽然と歴史から姿を消した旧文明を研究する科学者であり、この遺跡はアガリアという国の所有になっているらしい。
研究するうちに魔石に人の魂が宿っていると知り、旧文明の遺跡から発見された魔石で作られた石像を復活させようと思い立ったらしい。
遺跡の計器を操作すると空のシリンダーが現れ、それに石像を詰め込むと、一度シリンダーが引っ込んだ後アーリが出てきた。
別に石像がアーリになったわけではないので、アーリが操作して石像は返してあげた。
ガイノイドが壊れたり、充電切れになった際に中身だけ入れ替えて素早く再稼働させる仕組みらしく、よくも石像が無事だったと思う。
「またソレを運ばなきゃいけないのかよ」
山賊か野盗かといった連中のリーダーらしき男がボヤいているが、少し怖かったので反応したくなかった、名前も知らないし。
貴重な魔石で作られたその石像は素材の価値もさることながら歴史的、文化的価値もあるらしくとてもじゃないが値段をつけれない逸品らしい。
そんなものをよくもわかっていない壊れたら困る機械にぶち込むのは、許可が下りなかったらしく、そのため無許可でこっそりと実験をするためにセサルと外部から雇った人物しかいない。
「それには、超古代人の魂が今も入っているだろうけど、彫刻にしちゃってズタズタだし何より肉体の準備が出来てないからそのまま復活とかはたぶんできないかな」
落ち着くと別に祈りを叶えて還ることよりも、祈りが感じられない今のほうが魅力的に思えた、還っても体がベットの上で死んでいそうな気がしたし、その場合生き返れるのかも確証がない。
そのせいか、騙すような無茶な願いをしやがってとか思いはするものの、そこまで怒ったりすることはなかった。
今となってはいかにこの“オジさん"に取り入って、この世界での立場を確保するかのほうが重要だった。
問題のない事は素直に答えるし、自分でも半信半疑だが、カミサマ的なナニカだった事は絶対に言いたくない。
「おまえには俺の研究室に来てもらう」
「ちゃんと人間と同じように扱ってくれるよね? 住むスペースとか無いと嫌なんだけど」
「仮眠室がある。 お前の扱いについては俺だけでは決められん、ここは国の所有物だし、継いでお前もそうなる」
何だか逃げちゃいたい気分で一杯だ、とはいえここに定期的に帰ってきて充電しなきゃいけないし、魔力が切れたらどうなるか試したく無い。
「やっぱり、偉い人達に言うの?」
「当たり前だ、そもそも俺はここで新しく発見した事を論文にする義務と権利がある」
「あんまりひどい扱いにならないように、してほしいんだけど」
セサルの服装や持っている筆記用具などからどの程度文明的なのか推察しようとしてみる、見ただけで素材などは分からないが、一言でいうと白衣を上に重ね着した釣り人といった感じで、服装のセンスはともかく、日本で売っていてもそこまでおかしいとは思わない程度にはしっかり縫製されている。
先ほど仕舞ったメモ帳は皮で装丁されていて、筆記用具は細くて黒いチョークのようなものだ。
なんとなく最初の印象よりはマシだ、後ろの連中はヨレヨレの服を着ているうえに皮の装備を付けていて、腰には剣を下げていた、現代日本に住んでいた身としては野蛮な印象をもってしまう。
「まぁ意見を求められたら、良いように言っておく」
「不安だなぁ、ここに住むのはダメなの?」
「俺には決められんし遺跡を荒らされるのは困る。 目を離して勝手にどっかにいかれて行方不明になるのもな」
「時々充電しなきゃだから、どちらにせよここからそこまで離れられないよ」
「それが本当かはこっちにはわからん、モノに魔力を充填するなんてありふれた魔法だからな」
「そうなんだ」
「そもそも言われなきゃ人間じゃないって分からん上に、その見た目だから無碍にされることはないだろう」
施設のカメラから自分を見た感じ、15から17才の少女といった見た目で、我ながら顔は整っていると思う。
首から手首と足首にかけてウェットスーツのような体のラインが見える服装でなんとも悩ましい、これでこれから研究室とやらに行くまで人の目に晒されると思うと憂鬱だ。
「ソレは体の一部だったりするのか? 市井の女の服装には鎖骨まで見えるものが多い、人に紛れるならどうにかする必要がある」
セサルが自分の服の襟首に指をひっかけながら聞いてくる
「・・・これの下はちゃんとした体があるよ、この服自体は脱ぐのに壊さなきゃいけないけど」
新品の電化製品のディスプレイについてる保護シートみたいなものかなとよくわからないことを考える、ちなみにアーリは剝がさない派だ。
「そうか、完全に人のふりができるのであればやりようはある、それも含めて相談せねばならん、俺はいまだにお前が復活した古代人で、デタラメなことを言っていることもあると思っている」
そういいながら感情の読めない顔で、アーリの顔を覗き込んでくる。
「人間じゃない証明したほうがいい?」
「できるならな」
「じゃあたとえば・・・水とか入った水筒みたいなのはある?」
セサルは怪訝な顔をしながら自分の水筒を渡してくる。
金属製で平たい、大きめのスキットルのような見た目でフタはスクリューキャップで閉じている。
こんなものがあるのに銃ではなく剣を下げているのはちょっと不思議だ。
"ガイノイドとして"はできることはそんなに多くない、もともと作られた目的はここの施設の操作とクローンの育児などだ、持って数秒でセサルに返す。
「ほら、中を殺菌してお湯にしたよ」
「そ、そうか」
「なんだか微妙だった?」
「速さは見事なものだが、魔法でも同じことができるのでな・・・」
微妙な雰囲気のままその場から離れて、研究室とやらに向かうことにした。




