瑛人ーその4ー
電話を切った後、俺はすぐさま近所のコンビニに走った。
そして店員に
「ここバイト募集してますよね?雇ってください」
店員は慌てふためき
「店長呼んで来ます」
と逃げるように裏に入って行く。
五分ぐらい待つと気の弱そうな四十代であろう男性が歩み寄ってきた。
「私が店長です。君がバイトしたいと言う人かね?」
「そうです。今すぐに雇ってもらいたいんですけど」
「り、履歴書はあるかな?」
「雇ってくれるなら明日にでもいや、今すぐに書きます」
俺が即答するのでかなりあたふたしている。この人なら強引に押せるなと確信した。
「急に言われてもねぇ…履歴書もないみたいだし…その…」
と言い淀んだので
「あそこの張り紙に急募って書いてあるのあれは嘘ですか?急に言われたら困るのに急募なんですか?なんかおかしくないですか?この店は嘘つきが経営してる店なんですね!みなさ〜ん。この店は詐欺行為をしていますよ〜」
「君ちょっと待って!わかった採用するから。裏で履歴書書いて。ね?」
そう言うとコンビニの店長はがっくり項垂れた。
「ありがとうございます。では早速案内してください」
勝ったっと思った相手はコンビニの店長ではなく彼女だ。
あの挑戦的な態度と見下された感じが気に入らなかったので、今日中に連絡してやろうと思ったのである。
そして主に深夜働く契約をコンビニと交わした。
すぐにアパートに帰り、電話帳から本宮さんを選び発信した。
「もしもし」
「森平ですけど、今お時間大丈夫ですか?」
皮肉を込めた。
「大丈夫ですよ。何か?」
彼女は皮肉に気付いたようだった。
「バイトが決まったのでご連絡させていただきました。こちらはいつでも大丈夫です。そちらのご都合はどうですか?」
「そうですか。私もバイトですので都合はいつでもつけられます。森平さんの時間に合わせますよ」
彼女は怯まない。
「では明日の朝なんてどうでしょう?そうですね……十時くらいに堀江公園でいかがです?」
さすがに今日の明日は断ってくると思った。
「わかりました。では明日の朝十時に堀江公園で逢いましょう。では」
急に電話を切られ呆気にとられた。
彼女に一言すみませんと言わせようとしたが、うまくやり過ごされた気がして悔しい。
掴みにくい相手だなと思いながら携帯に写る本宮さんという文字を見つめていた。