衣咲ーその3ー
彼はどう思っただろうか。私は海外を旅して人見知りは治ったのだが強がりが前にも増していた。
あの状況であんなに強気にでたのもそのせいだ。
いきなりすみませんとか勝手にごめんなさいなど素直に人に謝ることができないのが私の一番直したいところである。
彼も変な女だと思っただろうな……と少し連絡するのを戸惑ったが、店長を探したい。その気持ちが勝っている。
受話器を耳にあてちょっと緊張しながら彼が出るのを待つ。
「もしもし」
「本宮です。今お時間大丈夫ですか?」
彼は少しびっくりしたようだった。
無理もない。私は公園で別れたその日に連絡したからだ。
「あっ……はい。大丈夫ですよ」
「早速なんですが、森平さんはいつぐらいならお時間大丈夫なんでしょう?」
「う〜ん。雇ってもらえるつもりで長野から出てきたのでまずバイトでも働くところを見つけたいんです」
確かに彼は新生活が始まったばかりだった。それを考えずに無理を言ってしまったが、私は素直に謝れない。
「そうですか。では落ち着いたら連絡お待ちしています」
「本宮さんは本当に探し出せると思いますか?僕は正直自信がないんです」
あの悲しそうな顔が目に浮かぶ。
「やってみなければわかりません。私は店長から行動を起こすことの大切さを教わりました。だから諦めないつもりです。例え一人でも」
「僕もすごく逢いたいんです。一緒に探します。さっさとバイト決めて連絡しますから。では」
彼が意地になっているように感じた。
少し掴みにくい人だが一人よりはいい。
もしも悲しい現実が待っていたとして、とても一人では受け止められそうにないから。