瑛人-その3ー
彼女の話を聞き自分に似たところがあると思った。
「俺は五才の時から親父がいないんです」
それ聞きうつ向いていた彼女がこちらを見る。
すごくせつないが、引き込まれるような綺麗な目をしている。
「トラックの運転手だったんですけど崖から落ちちゃったらしいんです。俺が死ぬのはきっと事故を起こした時だ。なんて言ってたらしいんで有言実行になるんですかね」
「だから店長のことをお父さんみたいだと思ったんですね。私とおんなじだ」
彼女はさっきのせつない表情ではなく何かを決意した表情に変わっていった。
「一緒に店長を探しませんか?あなたと私は気持ちが同じです。店長に逢いたいんですよね?」
「逢いたいですけど……でもどうやって探すんです?」「とにかく聞き込みましょう!いつぐらいまであったのか。何か手がかりが見つかるかもしれません!」
彼女の目は真剣そのものである。
「今日はこれから新しい家に荷物が届くのでまた日を改めて……というのはどうですか?」
彼女は機嫌を損ねた子供のような顔になった。すごく分かりやすい人だなと思う。
「わかりました。では連絡先教えてもらえますか?」連絡先を答えると
「私から連絡します。」
とスタスタ帰ってしまった。
すごい展開になったなと思う反面、まだ夢なような気分が抜けない。
彼女の姿が見えなくなりようやく冷静になれた俺は、公園の近くに借りたアパートに向かう。