秘仏
厨子は固く閉ざされていた。
手野市教育委員会に、これが発見されたという一報が入ったのは、半年ほど前のこと。
どんなものかと検分すると、かなり古い厨子だった。
発見者の話によれば、家の鞍を掃除していたら、かなり奥の方から出てきたものなのだという。
言い伝えも何もなく、ただ古そうなものなので文化財か何かだったら怖いという話だった。
そこで教育委員会に連絡を入れてくれたらしい。
半年間の調査研究、さらに文化財としての方面から吟味してみた結果。
厨子自身は江戸時代前期に作られたものだということが判明した。
だが、問題はその中身だった。
大日如来坐像が一座、それも着色や金もほとんど落ちていない状態で発見された。
作風からみて室町時代の前期に作られたのは間違いないだろうと鑑定された。
現在、文化庁に申請して文化財登録するかどうかについての追加調査を行っている。