後編
「以上が被告の供述となります。また、精神鑑定の結果、心神喪失の疑いがある為、無罪を主張いたします」
会場がざわつく。そりゃそうだろう、と私は溜め息をついた。
「では、検察官」
ゆっくりと立ち上がりながら、用意してきた書類をめくる。読み上げたくもない文章がずらり。
よくもまあ、無罪を主張できたものである。
「被告は、未成年でありながら、要介護の母親を衰弱死させ、更に四肢を切り取り、被害者から切り取った四肢を縫い付けています。殺されたのは同年代の女性であり、性的暴行の跡が見られます」
「それについては」
木槌のカン高い音で国選弁護人の言葉が遮られる。こんな人間の弁護をしないといけないなんて、可哀想な人だ。
「異議は後程お伝えください。検察官、続けて」
「はい。先にも伝えた通り、被害者には複数の性的暴行が見られ、腕を切り取ったうえで殺害しています。誰も殺して欲しいなど思っていたはずがないのです。殺して欲しい人間が、数ヶ月後の母親の誕生日の為にレストランを予約するでしょうか。弟の為にとネットで買い物をして来週を受け取れるような設定をするでしょうか」
傍聴席を見渡す。後ろの席で静かに泣き崩れる女性を見た。
被害者の母親だ。まだ三十に満たない筈なのに、その姿は枯れ木のようにボロボロだった。
「彼女は桜でも何でもない。人間です。殺したら、もう元には戻らない」
彼女の命も周りの生活も、何一つ。元に戻ることはない。
あなたは母親だから、ここには立てない。その辛さをここで、涙と一緒に堂々と吐き出すこともできない。
だからね、染井さん。あなたの代わりに私がいる。
由乃ちゃんに何があったのか、どんな思いだったのか。あなたが苦しみながら思い起こした全てを、私がここでしっかりと伝えるから。
「彼の行ったことは無罪ではない」
あなたが桜を見る度に泣かなくて良いように。
ソメイヨシノという響きが、あなたの心を抉らないように。
「私達は死刑もしくは無期懲役を希望します」
稚拙な文章でありながら最後まで読んでくださった方
とってもとっても、ありがとうございました。
恐らく、これが初投稿の小説になっていると思います。
他にも長編を仕上げているのですが
プロットまで仕上げて、筆を折り
序章と最終話だけ書いて、筆を折り
何度も筆を折ってきたせいで、全く進んでおりません。
ただ、今回このような短い小話でも
読んでくださる方がいるのだろうと思うと
筆を折らずに、もう少し頑張ろうと思えます。
読者の皆様あっての小説だな、と改めて感じました。
またどこかでお会いすることがあれば
ふらっと気ままに読んでいただければ幸いです!