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07

 姉のファウスティーナは第二王子に婚約破棄された件を耳にして、私の事が心配で飛んで来てくれたそうだ。


 姉は、私に甘々だ。自分の代わりに誘拐された私への後ろめたさもあるかもしれないけれど。

 でも、姉ならこの変態を追い返してくれるかもしれない。期待大!


 両親は姉にアルトゥールを婿殿だと紹介した。

 私が拾った狼が隣国の辺境伯で、二人は愛し合い、呪いは大体解け、完全に解けたら隣国へ行き、私も嫁ぐのだと。


 私の意見は完全に無視されてる。姉は私が納得していないことに気付いてくれた様子で、詳しい話をアルトゥールと私としたいと言って応接室へ連れ立ってくれた。姉の命令でダリアも傍に控えている。


「エヴァ。まずは謝らせて。第二王子との婚約を止められなくてごめんなさい。私がエヴァは駄目って言ったら、あの糞王子ったら、余計に貴女の事が欲しくなってしまったみたいで。婚約の話を無理やり押し通した癖に、破棄するなんて横暴だわ。しかも、暴言まで吐いていったのでしょう? 慰謝料をたっぷり請求しておくからっ」


 お姉様は怒りを露に力強く言い切った。

 この勢いなら慰謝料がっぽり奪い取ってくれそう。

 私の引きこもり資金にしよう。


 アルトゥールは姉の言葉に眉をひそめ、首をかしげていた。


「あの、暴言とは……?」

「エヴァを干物女と呼んだそうよ。城でも自分は騙された。被害者だ。あんな女と一緒になったら病気になるだとか……でも、エヴァ。少し肌の調子が悪いわね。髪も光沢を失っているわ。――ダリア! 食事と睡眠だけは管理なさいと言ったでしょう!?」

「も、申し訳ございません。ですが、最近のお嬢様はアルジャン様効果で、夜はしっかりとお休みになっておられました」

「あら。そうなの?」


 姉がアルトゥールに目線を送ると、彼は爽やかに微笑み返した。


「はい。拾われた当初、エヴァは傷ついた俺を寝ずに看病してくださいました。ここ二週間は、毎晩俺を枕にしてぐっすり眠れていました。恐らく、肌や髪の調子が悪いのは、知らず知らずの内に俺に魔力を分けてくれていたからだと思います」

「まぁ。それでは、貴方は魔法が使えるの?」

「はい。俺の国ではまぁ普通ですよ」

「そう。エヴァ、体は大丈夫なのかしら?」

「大丈夫です。ですが、私は銀狼のアルジャンを助けたかっただけで、決してこの人を助けたかったわけではないのです」

「あら。やっぱり、結婚はしたくないというの?」


 やっぱり姉は気付いてくれていた。

 よしよし。姉だけでも味方につけよう。


「はい! したくありません!」

「そう……。でも、その尻尾をどうにかしないと国へは帰れないそうよ。そうだわ! そんなもの力ずくで取ってしまいましょう。そうすれば国へ帰れるのでは?」

「えっ!?」

「それは名案ですね」


 そう言って立ち上がったアルトゥールは、ダリアに剣を持ってくるように告げ、姉もそれを了承した。


「え、ちょっと。何をする気なの?」


 目の前でフワる銀色の尻尾。

 こんな素晴らしいものに、剣を向けるの?


 ダリアが本当に剣を運んできた。

 その鋭い切っ先を目にした瞬間――。

 私は咄嗟に目の前のフワフワを抱きしめた。


「だ、駄目よっ。そんな酷いことをアルジャンにしないでっ!」

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