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番外編 狼と人間 1

「二日、たったの二日ですよ!! 凄くないですか!?」

「ああ、すごいすごい。ユスはすごいなぁー」


 早朝の食堂に、ユストゥスの賑やかな声が響く。人間に戻れてはしゃぐユストゥスに、アルトゥールは笑顔だけれど抑揚のない声で褒めていた。


「兄様! 久しぶりの兄弟の会話なのに、冷たいじゃないですか~」

「そうか? 狼のままでも会話できるから久しいとは思わないけど?」

「うぅ。やっぱり冷たい……」

「ユストゥス様……」


 しょぼんと肩をすくめるユストゥスに向かいに座るヘレナさんが励ましの言葉をかけている。


 今日は私達の結婚式の翌日。

 ユストゥスは朝、目が覚めると人間に戻ることができていたそうだ。

 大抵三日はかかると言われていたところ、二日で人間に戻れたので、ヘレナさんと自分の愛の深さに喜んだユストゥスは、すぐさまアルトゥールと私の寝室にその事を伝えに現れたのだ。

 

 まだ朝日が昇ったばかりの時間。

 早起きのアルトゥールもまだ寝ている時間だったのか、ユストゥスに起こされてアルトゥールはとても不機嫌である。


「しかし、そう喜んでいてよいのか? 人に戻れたということは、ヘレナは自分の家に帰るのではないか?」

「はっ!? 確かに……四六時中一緒にいられなくなるのか……」

「ユストゥス様、エヴァ様の護衛の人を任されておりますので、以前よりもたくさんお会いできますわ」

「そうだった! 良かった。兄様がエヴァ様と結婚して……って、そうか。兄様はそれで怒っているのですね」

  

 何かに気付き、ユストゥスはアルトゥールを見てニヤニヤと笑い始めた。それを見るとアルトゥールは食事を切り上げ立ち上がって言った。


「ユス。人間に戻ったことだし、今日は叔父上のところへ行くぞ。支度をしておけ。それと、エヴァ。朝食の続きは部屋のバルコニーでいただこう。森の湖畔も見えるぞ」

「森の湖畔! 動物がいそう……」

「もちろん」

「じゃあ、ユス、ヘレナさん。後ほどまた──きゃっ」


 私が二人にそう言うと、アルトゥールは私を抱き上げ、食事を運ぶようにとダリアに指示を出した。


「アルトゥール。二人が見てるのに……下ろして」

「この方が早い。では」


 アルトゥールがヘレナさんへ向けて軽く会釈すると、ユスは満面の笑みで答えた。


「はい! 初夜のあとのお二人だけのステキな朝の目覚めを邪魔してしまい失礼しました! ごゆっくりどうぞ~」

「もう、ユストゥス様ったら! エヴァ様、お気になさらず~」


 アルトゥールはユストゥスを一瞥すると、振り返らずに食堂を後にした。


「アルトゥール……。もしかして、ユスが言っていたことのせいで不機嫌だったの?」

「ああ。朝日とともに目が覚めて、いつエヴァを起こそうか、それとも起きるまで寝顔を見ていようかと考えていたところ、あいつが部屋に来た」


 自分が起こされて不機嫌だったのではなくて、私を起こされて不機嫌だったのね。


「身体は大丈夫か?」

「ええ。どうして?」


 そう言えば、食堂に行く時もこうして抱き上げてくれていたけど……。


「いや。大丈夫ならいい」


 アルトゥールはどうしてか少し恥ずかしそうに言い、足早に部屋へ向かった。


 





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