番外編 叔父との確執2
「アルトゥール。よく見れば分かるだろ。この子が勝手に俺の腕を掴んで離さないんだ。お前から何とか言え」
「……エヴァ。その人はバッチぃから触っちゃ駄目だぞ」
怖っ。言い方は子供を嗜めるようそれなのに、背中を幾本もの針で突き刺されたかのような魔力を感じる。
涙目で叔父様へ目を向けると、琥珀色の瞳で私を見下ろして、叔父様は軽く舌打ちすると私の背中に空いた手を回して肩を抱き寄せた。
その瞬間、アルトゥールからのプレッシャーが膨大したのに、私へかかる圧が緩和された。
叔父様の魔力で包まれ、守られているようだ。
「お前が威圧的だから、花嫁が怖がっているぞ?」
「なっ……貴様っ。――おいっ。ユスッ。離せっ」
叔父様に飛びかかろうとしたアルトゥールの服を黒狼のユスが噛みついて止めていた。
この殺気立った魔力にユスは目を覚ましたようだ。ヘレナさんはアルトゥールの魔力で、窓辺から動けなくなっていた。
私は叔父様を掴んでいた手を離してアルトゥールに駆け寄ろうとしたけれど、叔父様から手を離した瞬間に、アルトゥールの魔力に当てられてよろけてしまい、飛び出してきたアルトゥールに体を支えられた。
「エヴァっ。大丈夫か? 何で叔父上に……」
「あの方が、私を助けてくれた方なの。昔……森で……」
「そ、それって。――叔父上。本当ですか? エヴァを助けたのは」
「俺じゃない」
「貴方です!」
「じゃあ、叔父上だ。エヴァは間違えない」
私が間髪入れずに言い返すと、アルトゥールも賛同してくれた。
叔父様は暫し思案したあと、重い口を開いた。
「…………ああ。私だ。これで満足か?」
「叔父上が……エヴァを」
「そうだ。それもお前の父の尻拭いのひとつだ。全てを破壊することでしか守ることを知らない、お前の愚かな父のな」
「……っ。父を愚弄するなっ」
アルトゥールの父の尻拭い?
一体なぜそんな話になるのか。私にはさっぱり分からなかった。
「叔父様。何故、私が拐われたのが、アルトゥールのお父様のせいになるのでしょうか?」
叔父様は、アルトゥールを睨みながら答えた。
「君を拐った輩は、そいつの父によって里を失い愚行に走ったたのだ。元を辿ればあいつのせいだ」
「それは国の為にしたことだ」
「国の為か。他に方法はなかったというのか?」
「それは……」
アルトゥールが言葉に詰まると、叔父様は私に言った。
「良いのか? そいつは父親にそっくりだ。周りを力でねじ伏せることでしか調和がとれないのだ。そいつも父親のように早死にするだろう。人々に恐れられる破壊の力で、多くの命も国も奪い上に立ってきた男だからな。己の命が惜しくば、逃げた方が良い」
確かに、アルトゥールの力は強力だし、身体が勝手に震えてしまうほどだ。
今だって立っているのがやっとなくらいだ。
だけど──。
「アルトゥールは、私と出会ってから誰の命も奪っていません」
「そうか? 今も君の身体を己の魔力で害しているではないか」
「あっ。エヴァ。すまない。俺のせいで……」
戸惑いからか、私を抱き止めたアルトゥールの手から力が緩んだ。
アルトゥールは私を守ろうとしただけで、何も悪くないのに。
「こんなの何でもないわ。叔父様。アルトゥールは隣国の王子を追い払う際、力を制御し誰の命も奪わずにすべての兵を捕らえてみせました」
「そんなもの。相手が弱かっただけだ。本当の戦場に立てば、アルトゥールはたくさんの命を奪い、国を」
「そんな事しません。私がさせません!」
「エヴァ……」
背中にアルトゥールの喜びに満ちた声が降りかかる。
叔父様は眼光を強めて私とアルトゥールを睨みつけていた。
「叔父様だったら、国をどう守るのですか? アルトゥールやアルトゥールのお父様とは違うやり方を、叔父様はご存知なのでしょう?」
「アルトゥールは聞く耳などもたん。いずれ父の後を追うように、戦に飲まれ早々に命を燃やし尽くすだろう。お前など、国に帰ってこなければ良かったのだ」
そんな事はない。そう言い返そうとしていたら、私を諭すようにアルトゥールに肩を掴まれた。
そしてアルトゥールは叔父様の前へ出ると、ゆっくりと膝をついた。
「叔父上。今までの非礼をお詫びいたします。俺は父の事を尊敬しています。父と同じ道を進む事しか考えていませんでした。ですが……エヴァを守りたい。ずっと側にいたい。だから、父の様に早く死ぬわけにはいかない。叔父上の知恵と力を俺に貸してください」
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