04
「お嬢様っ。どうなさいましたかっ!?」
エヴァの部屋に飛び込んできたのはメイドのダリアだった。
彼女が目にしたのは、ベッド上の二つの人影。
右頬に手を添え呆けている銀髪の美青年と、その横で丸くなって震えるエヴァの姿。
「ぜ、全裸のイケメン!? お、おおおおおおお嬢様に男が出来ましたぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「ち、違うわっ。ダリアっ!?」
ダリアは私の言葉など聞く様子もなく廊下へ走り、部屋に男性がいたことを叫びまくった。その隙に、変態はさっとシーツを腰に巻き、私に潤んだ瞳を向ける。
「エヴァ。驚かしてすまない。怖がらなくて良いのだよ。俺は呪いで狼になっていた――」
「違う。貴方がアルジャンだなんて認めないわっ。人間なんて大っ嫌いっ。私のアルジャンを返してっ」
「だから、アルジャンは俺で……」
変態が困って頭をかいた時、ダリアが両親と兄を連れて部屋に騒々しく戻ってきた。
「旦那様! ご覧くださいませっ!!」
「ほ、本当に男を連れ込んでいるじゃないかっ」
父が床に膝をついて崩れ落ちた。
「しかも、鍛え上げられた良い躰っ」
母は口元を押さえて涙を流した。
「エヴァっ。人間嫌いが治ったんだな!?」
兄は感動したっ。と、叫んで号泣した。
いやいや。不審者だよ。捕まえてよ。
「ち、違います。こんな人知りません。不審者ですから捕まえてくださいっ!」
「「「「ぇっ?」」」」
両親と兄、それからダリアが私の言葉に固まった。
しかし、父はすぐに優しい顔つきになると首を横に振った。
「いやいや。不審者って言っても無防備過ぎるだろう。彼からは敵意を感じない。婚約者に嫌われたかったのは、彼がいたからなのだな」
「違いますっ!」
「まぁ。恥ずかしがってしまって。やっとエヴァも自分が人間だって気づいたのね。私達は貴女が結婚して人間らしい生活を送ってくれればそれでいいのよ」
「人間だって自覚ぐらいありますっ!」
「エヴァ。ダリアに愛し合う姿を見られて恥ずかしいのは分かる。でも安心しろ。この兄である私だって、妻を娶ってからは、使用人に恥ずかしい姿を幾度となく見せてきたのだから」
「変なこと暴露しないで下さいっ。それから私はこの変態と愛し合ってなんかっ――」
好き勝手言い始めた家族に言い返そうとした時、変態に手を握られて、私は驚いて言葉を忘れた。
「エヴァ、落ち着いて。俺に任せて」
はい? 何を任せろと仰ってます?