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「エヴァ。朝だよ……。エヴァ?」

「うーん。後すこ……ん? なななななな何してるのよ!?」


 目覚めにアルトゥールがいた。しかも人間の。

 これはいつもの事だけれど、約束が違う。


「何って……昨夜も一緒に寝たじゃないか」

「で、でも。夜は銀狼でって決めたじゃない!」

「今は朝だけど?」

「……う、嘘つき」


 爽やかな笑顔で反論されて、私は苦し紛れにそう呟くことしか出来なかった。


「まぁ。朝から見せつけてくれてしまいやがってですわ。お嬢様ったら」

「ダリア、いたのね。言葉遣いがおかしいわよ……」

「ふふっ。お気になさらず。――明日、旦那様と奥様がお帰りになったら、さぞかし喜んでくださるでしょうね」

「そうだな。エヴァ。明日が楽しみだな」


 そう言って満面の笑みを私に向けるアルトゥール。 

 不覚にも可愛いと思ってしまった。


「そ、そうね」


 彼の意見を肯定したら、ダリアが悶えてアルトゥールまで嬉しそうに目を丸くしていた。

 

 明日、両親はどんな反応をするだろう。

 両親には迷惑しかかけてこなかったから、喜んでくれたら、凄く嬉しいかもしれない。



 この時の私は、午後にあんな大事件が起こるなんて想像もしていなかった。


 ◇◇


 昼下がり、庭でアルトゥールとユストゥスは剣の稽古に精を出し、私はそれを庭の片隅でダリアと一緒に眺めていた。


「ダリア。辺境伯にお嫁に行くって……私、何をしたらいいのかしら?」

「まぁ。行く気満々なのですね!」

「いちいち煩いわね……」

「ふふっ。今まで通りでいいと思いますよ」

「今まで通り?」

「昼間は動物のお世話をして、夜はアルトゥール様のお世話をして差し上げればいいのです。ぐふふっ」


 ダリアの笑い方が卑しすぎる。

 良からぬことを考えているに違いない。


「……新しいメイドでも雇おうかしら」

「お、お嬢様ぁっ。――あ、でもいいですよ。私、アルトゥール様に雇って貰いますので」


 確かに、アルトゥールなら雇ってくれそう。

 アルトゥールに目を向けると、二人は剣を納めて屋敷の門を眺めていた。

 そして不満そうにこちらへ振り返る。


「エヴァ。また来たみたいだけど?」

「どなたが?」

「あいつだよ。コルネリウス馬鹿王子様」

「え? あの人はもう二度といらっしゃらないのでは?」


 すると門の番の者が慌てて庭に駆け込んできた。


「お、お嬢様っ。コルネリウス様が、近衛騎士を引き連れて現れました! お嬢様とユストゥス様を引き渡せと仰っておりますっ」


 



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