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 ふわふわのモフモフ。私のアルジャン。


 アルジャンの尻尾を抱きしめたり、お腹を枕にしていたり、いつも私は至高のモフに包まれて眠っていた。

 腕の中にはアルトゥールの尻尾がある。

 私は迷うことなくギュッとモフモフを抱きしめた。

 

 こうして求めてしまうのは仕方ないの。

 だって、呪いだから。

 そう思うと心が楽になった。


 でも、尻尾にしては大きいような……。

 それに、今日は珍しくアルトゥールが起こしてくれない。


 私はゆっくりと瞳を開いた。

 銀色の光沢のある毛並みが目の前にある。

 それは尻尾より大きくて……?


「あ、アルジャン!?」


 私はベッドの上で銀狼のアルジャンと一緒に寝ていた。私の声でアルジャンも目を覚ましムクリと顔を上げる。


 首を左右に振り戸惑う様子のアルジャンが可愛くて、私はこれがアルトゥールだろうと思っていても躊躇うことなく抱きしめた。

 でも、どうやって狼に?


「ねえ。アルトゥールなの?」


 銀狼はベッドの上でお座りしたまま大きく頷いた。


「人間には……戻れるの?」


 そう尋ねると、琥珀色の瞳を丸く瞬かせて、じっとアルトゥールに見つめ返された。

 人間に戻って欲しいのか? そんな声が聞こえた気がしたかと思うと、鼻を擦り寄せられる。

 首をモフモフし返すと、アルトゥールは気持ち良さそうに目を細めて、私をベッドに押し倒した。


「きゃっ」


 モフモフに顔が埋められて、くすぐったくて瞳を閉じる。この子はアルジャンだけどアルトゥールだって思うと、じゃれられて嬉しいような恥ずかしいような複雑な気持ちになる。そう戸惑っていると、額をペロッと舐められた。


「きゃっ。あ、アルトゥールったら……」

「エヴァ……」


 すぐ近くでアルトゥールの声がした。

 あら? モフモフを感じない。

 恐る恐る目を開けると、眼前に銀髪の美青年がいた。

 この状況は……二度目?


「あ、戻れた」

「き、……きゃ――」

「エヴァ。落ち着いて。今ダリアに来られたら……困るし。じょ、状況を整理しよう!」


 叫ぼうとしたら口を塞がれた。

 珍しくアルトゥールも動揺していて、それを見たら少し冷静になれた。


 アルトゥールは素早くベッドから降りると身なりを整えた。その背中には……尻尾がない。


「あ、アルトゥール。尻尾が……」

「あ、本当だ。でも――これからはいつでもアルジャンに会えるかもしれないよ。心当たりがあるんだ」

「心当たり?」

「試してみてもいいか?」

「……ええ。いいけれど何をするの?」

「えっと……」


 アルトゥールは何か言いかけて口ごもった。

 さっきから落ち着きがなくて彼らしくない。

 狼になって言葉を忘れたのかしら。


「アルトゥール。どうしたの?」

「その……寝る前に、エヴァの額にキスをした。今も……。だから――」

「へ……」

「嫌ならいいんだ。無理にとは」


 そんな真っ赤な顔で言われたら、私の方が恥ずかしいじゃない。

 ここは平然とした態度で返さなくちゃ。

 キスなんて減るものでもないし、どうってことないわよ。

 それに、さっきみたいにアルジャンを抱きしめたいし……。

 

「い、いいわよ。アルジャンになれたら、全身ブラッシングさせてくれるって約束してくれるかしら?」

「えっ。いいのか?……じゃあ――」


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