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 朝目が覚めると、背中に温かな感触があった。

 俺の尻尾に……じゃなくて、背中にぴったりと誰かがくっついている。


 夢か? 違う。

 エヴァが尻尾より俺を選んでくれたんだ。

 そういえば、昨日目覚めてから俺の事を名前で呼んでいる。エヴァ自身は気づいていないみたいだけど。


 嬉しくて、俺は動かずエヴァがどんな風に背中にくっついているのか想像した。


 振り向く前に名前を呼んで起こしてみようか。

 自分から俺にくっついて寝ていたなんて知ったらきっと恥ずかしがって可愛いだろう。

 うん。それだ。


「エヴァ。朝だぞ……。エヴァ?」

「……ん?」

「ん?――ぁっ」


 背中から野太い声が聞こえて、俺はベッドから飛び起きた。

 俺のベッドで寝惚けているのは弟のユスだった。

 最悪だ。すっかり忘れていた。


「今、俺を誰かと間違えてましたか?」

「そ、そんなはずないだろっ。というか、なぜ俺のベッドで寝ている? 隣のベッドがあるだろっ」

「えー。俺、枕代わると眠れないんですよ。兄様にくっついて寝ると、家のベッドみたいな気分で眠れるんです。遠征の時だって、いつも隣同士で寝てるじゃないですか」


 悪びれた様子もなく、大きな欠伸をしながらユスは隣のベッドへ戻っていった。


「はぁ。やめろ。メイドのダリアが見たら、あらぬ誤解を招くことになる」

「ははっ。ここの屋敷の人達、良い方ばかりですよね」


 噂をしていると、本当にダリアが部屋に訪ねてきた。


「アルトゥール様、ユストゥス様。朝食の準備が整いました」

「ありがとう。ダリア。……エヴァは、もう起きているかい?」

「はい。ですが、朝食は後で召し上がるそうです。たまには、兄弟水入らずなんていかがでしょうか、と」


 ダリアの言葉はぎこちない。昨夜、エヴァはご機嫌斜めだった。結婚を迫ったのが不味かっただろうか。


「エヴァに、何かあったのか?」

「えっとですね……。色々と思うところがあるそうで、お一人で考えたいそうです。良い機会ですし、今日は一日ユストゥス様とお過ごしくださいませ」

「……分かった」

「兄様、これはアレですよ」

「?」

「押して駄目なら引いてみろって奴です! ね、ダリアさん」

「まぁ、そうです。それです! では、お支度が済みましたら食堂にいらしてくださいね」


 ダリアはそう言って慌ただしく部屋を出ていった。何か隠しているのは確かだけれど、一体なんだろうか。


 ◇◇◇◇


「お嬢様。アルトゥール様は今日一日、ユストゥス様と過ごされるそうです」

「そう。良かったわ」

「さて、寝ましょうか?」

「でも……」

「ダリアが添い寝しましょうか?」

「結構よ。よ、夜ちゃんと寝たもの」

「嘘です! ご自分でご確認下さい!」


 ダリアに渡された手鏡に映る私の目の下には、くっきりとクマができていた。


 だって……一睡も出来なかったんですもの!

 

 誰が見てもドン引きするレベルのクマが、目元にしっかりと刻まれていた。



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