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 コルネリウスはベリス侯爵領を訪ねた翌日、王都の学園に通うシェレスティーナを訪ねていた。

 中庭のベンチに呼び出したのだが、まだ来ない。


 昨日の事を思い出すと腹が立った。部屋までエヴァンジェリーナを運んだのに、礼も言われず侯爵に追い出され、しかも婚約を破棄したばかりなのに、もう新しい婚約話が出ていたのだから。


「辺境伯の嫁にだと……そんな話、信じるものか。エヴァンジェリーナは私の婚約者だったのに……」


 一方的に破棄したのは自分ではあるが、向こうにも非がある。見た目を偽っていたのだから。

 それに、昨日の侯爵の反応だと、魔法を使っていたのはエヴァンジェリーナかもしれない。恐らく、それを隠すために、執事が隣国の使者や婚約の話などをでっち上げたのだろう。


 昨日は仕方なく引いたが、今日はシェレスティーナから真実を探りだそうとしていた。


「コルネリウス様。お呼びですか?」

「シェレスティーナ。君の姉、エヴァンジェリーナについて尋ねたい。彼女は魔法が使えるのだろう? 昨日私は森で怪我をした。しかし、目が覚めると怪我は治っていて、エヴァンジェリーナがいたのだ」


 シェレスティーナは顔色一つ変えずに言葉を返した。


「夢でも見ていたのではありませんか? 姉にそんな力があるなんて、聞いたこともありません」

「隠さなくて良い。人嫌いなことは分かっている。だから、魔術学園への強制入学はさせないように計らってやる。私の婚約者になるならな」

「まぁ。怪我をされたと仰いましたが、頭を打ってしまったのですね。ご自分のされたことをお忘れですか? 姉を侮辱して、婚約を破棄したばかりではありませんか」

「それは、あちらが悪いのだ。化け物のような化粧をして私に嫌われようとしていた。本当は、あんなに美しいのに……」

「は?」


 さっきまでの作り笑顔を崩し、シェレスティーナは俺を睨み付けてきた。こんな素の表情を見るのは初めてだ。


「何だその反応は。化粧を落としたエヴァンジェリーナは、可憐な美少女だった。肌は白く髪は艶めき、唇は薔薇色。身体は華奢で強く抱くと壊れてしまいそうだった」

「だ、誰かとお間違いでは?」

「いや。間違ってなどいない! 倒れた彼女を私が部屋まで運んだのだ」

「倒れたって……。それ、コルネリウス様が触れたせいではありませんか?」


 まただ。ベリス家の人間はすぐに俺を悪者にする。


「そんな事はない! それより、ロドリゲス辺境伯から求婚されていることは知っているのか?」

「なななななんですって!? 引きこもりの姉にどうしてそんなことが……」

「それが、森に迷い混んだ辺境伯のペットを、エヴァンジェリーナが見つけて治療したことがきっかけで出逢ったというのだ。おかしな話だろう?」

「お姉様は動物が人間よりも大好きなの。有り得ない話ではないわ。困ったわね……」

「ほ、本気で言っているのか?」

「はい。お姉様が不摂生な生活を送っているのも、夜行性の動物の観察や治療に当たっているからです。見た目を重視なさるコルネリウス様には合いませんでしょう?」

「いや……。私はエヴァンジェリーナがいい。辺境伯の元へ嫁がせたくなければ、協力してくれないか?」

「は? 何故私が協力を? コルネリウス様より、ファウスティーナお姉様に頼みますわ。それに、コルネリウス様のお話を鵜呑みにした訳ではありませんので、唆そうとしても無駄ですわ。失礼致しますっ」

「お、おいっ。……くそっ。姉妹揃って生意気だな……」


 実は、シェレスティーナには以前フラれている。「貴方だけでは物足りないから、他の殿方とも仲良くしたい」と言われて尻軽女だと発覚したので私から捨てた。


 姉のファウスティーナには一目惚れだったが、その時もう公爵夫人だった為、求婚したらワイズリー公爵に睨まれ散々だった。


 期待していたエヴァンジェリーナは、見た目を偽ってはいたが、儚げで落ち着いていて性格も悪くなさそうだ。何とか婚約者の地位を取り戻したい。

 

 しかし、味方が誰もいない。父は勝手に婚約を解消したことに憤慨しているし、ベリス侯爵も頭に血が上りきったままで話にならない。

 ワイズリー公爵も攻撃的だし、隣国の辺境伯までしゃしゃり出てきた。


 こうなったら、やっぱりアレしかない。

 せめて、この国から出さないように――。


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