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「あ、アルジャンか?」


 コルネリウスは俺を見て驚き、部屋を一回り見るとベッドまでズカズカと足を進めた。


「お、お嬢様は?」

「廊下で倒れたので私が運んだ」


 お前が触れたから倒れたんだろうが。と言いたくなったが我慢した。

 コルネリウスが手早くエヴァをベッドへ寝かせた時、俺の背中にローブがかけられた。振り返るとダリアがいた。尻尾を隠してくれたのだ。


「アルジャン。外へ薪を取りに行くのですよね。制服を汚すといけませんので、ローブを着てくださいね」

「はい。ですが、今はお嬢様が――」

「エヴァンジェリーナは私が見ていよう。医師を呼びたまえ」


 コルネリウスは言いながらエヴァの額に手を触れた。その瞬間、ビクッとエヴァの身体が強張っていた。それでもコルネリウスはエヴァの額から頬を指でなぞり、右腕の痣に触れた。


「アルジャン。先程、森でお前と一緒にいたのはエヴァンジェリーナだな。ここに私の手の痕が残っていたのだよ」

「……あの、お嬢様に触れないでいただけますか?」

「ん?」

「コルネリウス様に触れられてお嬢様が苦しんでいらっしゃるのが分かりませんか? それに、コルネリウス様には――」


『エヴァぁぁぁぁぁ!?』


 俺の言葉は突然開け放たれた扉から響き渡るベリス侯爵の叫び声に遮られた。

 侯爵はコルネリウスを視界に捉えるなり、物凄い形相で怒鳴り散らした。


「貴様っ。何故まだ屋敷におるのだっ。今すぐ出ていけっ!」

「ベリス侯爵様。倒れたエヴァンジェリーナ様を運んだのは私です。お怒りをお静めください」

「そうか。お前のせいでエヴァは倒れたのだなっ。つまみ出される前に自分から出て行けっ!」


 コルネリウスはベリス侯爵に臆することなく、平然と微笑み口を開いた。


「分かりました。失礼させて頂きます。――あ、それと……。エヴァンジェリーナは魔法が使えるのですね」

「な……何を言っておるのだ……」


 明らかに動揺するベリス侯爵に、コルネリウスは更に尋ねる。


「今日、森でエヴァンジェリーナ様とお会いしたのですよ。本当は可憐で美しい女性なのに、魔法で化けたようにみすぼらしい姿になられているので」

「そ、そういう意味か。確かに、元は良いかもしれんが、エヴァは見た目に無頓着なのだ。しかし、貴様には関係の無いことだ」

「そうですか。それと、もうひとつ意味がございます。森で会った時、私は怪我をしていましたが、目を覚ました時には治っていたのです。エヴァンジェリーナ様は傷を癒す魔法が使えるのですね」

「そ、それは……」


 ベリス侯爵もエヴァに似て心情が全て顔に出る。

 俺に助けを求めるように視線を伸ばした。


「コルネリウス様。それは私の魔法です」

「? アルジャンの、だと?」

「はい。隠しておりましたが、私は隣国のロドリゲス領から参りました使者にございます。ですから、魔法もそれなりに」

「何故、隣国の使者が……それも、悪名高い辺境伯の使者だと。ベリス侯爵様どういうことですか?」


 口をつぐむベリス侯爵に変わって俺が応えた。


「それは……ロドリゲス辺境伯が、エヴァンジェリーナ様を花嫁として迎えたいと仰ったからです」


 コルネリウスは呆然としたまま固まってしまった。



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