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 コルネリウスは近衛騎士に介抱されて口と顔の泥を落とすと、彼らにキレ始めた。


「貴様らは何をしていたのだ!? 城に戻ったら処分してやるからなっ!」

「申し訳ございません」

「早くベリス侯爵家へ行くぞ。そこで湯を借りる。――そういえば、お前達は何者だ?」


 コルネリウスは私とアルジャンモドキに視線を伸ばした。私はローブのフードを引き深く被った。


「私はベリス侯爵家の執事です。先に戻りコルネリウス様をお迎えする支度を済ませて置きますので、ここで失礼致します」

「ほう。気が利くな。名は何という」

「……アルジャンと申します。では」


 アルジャンモドキ改め執事アルジャンは私をノワールに先に乗せ行くようにと合図し、私は馬を走らせた。

 その時、風でフードが脱げてしまった。フードを戻そうと振り返ると、コルネリウスはまだこちらを見ていて、視線が重なる。

 彼と目が会うことも、ちゃんと顔を見ることも初めてだった。

 怒っているからか顔は赤く、同い年と聞いていたが、我儘でやんちゃな少年のように見える。

 第一王子は聡明な方だと聞いているが、彼はそうは見えない。

 まぁ、私が言えたことでは無いけれど。


 私の視線を阻害するようにアルジャンが隣に来ると、不満そうな目を向けられた。


「顔は見せるな」

「え?」

「惚れられたら困るだろ?」

「またまた。……そんな馬鹿なことがある筈ないでしょう?」


 干物女だなんて罵ったコルネリウスに、顔で惚れられるとかあり得ない。


 ◇◇


 コルネリウスは二人が馬で走り去った後も呆然とその背を見つめていた。


「コルネリウス様。お怪我はございませんか?」

「……だ?」

「はい?」

「今の少女は誰だっ!?」

「えっ。見ておりませんでした。ベリス侯爵家へ行けばいらっしゃるのではないでしょうか?」

「そ、そうだな。それだ。行こう」

「は、はい」


 コルネリウスは近衛騎士の一人の馬を奪いベリス侯爵家へ急いだ。


 今日はベリス侯爵とエヴァンジェリーナへ謝罪に来た。

 勝手に婚約を破棄したことを父である国王にぶちギレられ、その上、ワイズリー公爵からも慰謝料を払った方がいいと脅された。

 そのせいで馬車も出してもらえず馬で何時間もかけてここまで来た。護衛も二人だけだし、猪に襲われ散々ではあったが、……来た甲斐があった。


 ファウスティーナの気品と、シェレスティーナの様な愛らしさを併せ持った美少女に会えたのだから。


 使用人の娘かと思ったが、あの顔はベリス家の令嬢のように思えた。三姉妹ではなく四姉妹だったのか……。それも行けばわかるだろう。


 またあの干物の顔を見て、しかも謝罪しなければならないのは嫌だったが、あの娘に会えるならプラマイゼロ。むしろプラスだ。


 コルネリウスは逸る気持ちを押さえ、馬に鞭を打った。





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