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こちら、裏総務部 秘密処理課  作者: 流山 直喜
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こちら、裏総務部 秘密処理課 5(後編)

そして、奈津美はモテ男の恋テクを間近で目撃する。


進藤は3日連続で女性に「これ落ちましたよ?」「席をどうぞ」「同じメニューですね」など、さりげなく話しかけた。

毎回笑顔でニコリとして、顔を覚えさえ、「昨日もお会いしましたね、運命でしょうか」など、キザな台詞を言い、なんと本当に女を落としてしまった。


スーツをバシッと着た、爽やかイケメンエリート風サラリーマンの見た目により、女の警戒は薄れる。

イケメンは、女に恋の麻薬を出させて警戒を解き、力業で簡単に落とせるという世の非情さを奈津美は噛み締める。


そして、女を誘ってレストランに入り、女がトイレに行くのを狙って、スマートフォンを拝借する。


もちろん奈津美も遅れて同じレストランに入っている。

違う席で素早くPCにスマートフォンのデータを写し、帰りにさりげなくスマートホンをバックに返す。


ついでに、松木宛に「新しい売人を紹介する、3日後に同じ場所にいる」というメールを、女のスマートフォンから送っておいた。

松木が外回りの時間を調べて指定したので、必ず来るはずだ。


女のスマートフォンのデータは、大量の顧客情報があり、松木とのやり取りもしっかり残されていた。


そして、指定日に飯田と奈津美、進藤がホテルの前で張り込む。

売人役は、奈津美がする。

ヒラヒラのワンピースを着て、それっぽい。

が、奈津美はもちろんハニートラップなど出来ないため、松木の腕を掴むと無言ではホテルに引っ張っていった。


先に、ホテルの部屋に進藤と飯田が隠れている。

風呂場にいて中から見えないため、奈津美の声を合図に出ていくことになっている。


部屋に着くと同時に、松木は言う。

「君が新しいシャブのバイニンだろう」

「はい、どのくらいほしいですか?」

「ああ、そうだな・・100gだな。

その前に味見させろ」


そう言って、突然奈津美の首を絞め、強引にキスをしようとする。

奈津美は突然のことで声が出ない。

息をするために首を横に振る。


「おいおい、味見できないじゃない、前の女より若くてかわいいのに」

首を横に向けて、キスを拒む。

手で絞めている首元をクンクン匂いを嗅いでくる。

声が出せずに応援が呼べない。

顎を舐められる。


(こいつやばい、気持ち悪い、助けて)

奈津美はいよいよ苦しくなってきて、生理的な涙が出てきた。


ゴンっと音と共に、松木が倒れる。

進藤がベッドサイドにあったランプで思いっきり殴ったらしい。


「ごほっ、ごほっ」

喉をやられ熱い。呼吸するだけでむせ返るような咳が出る。

(助かった・・・)


進藤は松木の胸ぐらをつかみ、もう一発殴る。

目が怒りで揺らいでいる。ボコボコにしそうだ。

これ以上は、暴行になってしまう。


「進藤くん」

奈津美が進藤の腕を掴むと、ハッとして

「山下、大丈夫か?」

普通の目に戻る。

「もう大丈夫だよ」

奈津美の声は枯れていた。


飯田と進藤が松木を捕獲し、現行犯で証拠を押さえることが出来た。

松木は観念して、証拠となるスマートフォンの情報を提供した。


その日、奈津美は舐められた顎部分が気持ち悪く、何度も洗った。

首に絞められた跡も残っている。数日間消えなかった。


次の日、飯田と進藤からの報告を受けた貫田は奈津美をとても心配した。

「大丈夫?怖かったよね、ごめんね」

いつも七福神の笑顔の貫田が、こんなに悲しそう顔をして謝るの初めてかもしれない。


「大丈夫ですよ!きれいに洗って消毒したので。

逆に、跡が見苦しくすみません」

笑顔で首の首のスカーフを触る。


飯田と進藤も、暗い顔で謝罪してきた。

「山下さん、本当に申し訳なかった

若い女性の君が、触れられて怖かっただろう」

「出るのが遅くなって本当にすまない」


奈津美としては、レイプされたわけではないし、服だって着たままで、唇も触れていない。

自分の体を触らせるくらい、タダ同然、と思っていたが、どうも周りは違うらしい。


そして、松木の処理が始まった。


まず、松木につては、スマートフォンのデータを抜き取る。


そして、松木は、一人で消費するには多い量の覚醒剤を買っていた。そこで、松木が転売していないかを疑ったところ、松木のスマートフォンには、他の社員との疑わしいやり取りも発見され、芋づる式に見つけることが出来た。


「情報を出せば、懲戒解雇せずに出向扱いで救ってやる」ということを匂わせて、騙された松木は、さらに芋づる式でグループ会社数人の覚醒剤使用の情報を出してきた。

まあ、会社はそんな甘く、警察にすぐ引き渡し、逮捕歴を作ってから即懲戒解雇にゆっくりするつもりだ。


そして、5年も前から犯行はあり、社内は騒然となってしまった。

松木や、松木が薬を売っていた同僚は、会社のお金を横領していた疑いもあり、監査部も忙しくなる。

そのため、監査部との兼務の進藤は、しばらくはそちらの仕事につくことになった。


「行成さんに、仕事増やしてごめんって言っといてね」

「ああ、言っとく」


行成には、ラインで「落ち着いたらまた女子会しましょう」とは送ったが、既読にならないので、それどころではないのだろう。


進藤は、去り際に奈津美をじっと見て、首の痣に手を伸ばす。


少し触れる。


奈津美は、突然のことで「?」となっている。


悲しそうな、本当に辛そうな目をしている。

(私より辛そうだよ?)

「悪かった。痣、早く消えるといいな・・あ、すまん」

手を引っ込めて、距離をとる。


「1mルールあるもんな。

後で怖くなることもあるから、

何かあったら、すぐに連絡しろよ」


そう言って、奈津美に私用の連絡先を渡してきた。

いつもなら絶対に受け取らないが、こんな真剣に心配されたら受け取らない訳いかない。


(簡単に女に連絡先を渡すテクニック、恐れ入りました。今まで百戦錬磨なんだろうね)


関心する奈津美だった。

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