表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら、裏総務部 秘密処理課  作者: 流山 直喜
35/42

こちら、裏総務部 秘密処理課 13ー4

 キラキラ社員田辺は、一夜のシンデレラとの再開を、奈津美と進藤に依頼した。


 奈津美と進藤はシンデレラの正体を見抜くも、シンデレラ堤理花が会いたがっていないことを知り、会うための条件を交渉する。


 堤は真面目な社員で、職場での待遇アップを望んでいた。


 奈津美は、その待遇が改善されたら会ってくれるか、と聞いたところ、「まぁ、できるとは思いませんが・・・どうせ辞めようと思う会社ですし、後輩が苦労しないようにして辞めるのも、恩返しかな。再開しても、辞めたら会わないでしょう」と、言った。

 なんとも堤らしい、控えめでいい人な答えだった。


 今度は進藤が田辺に条件を伝えると、二つ返事で回答した。


 進藤いわく、田辺はいい意味で欲望に忠実で、何かを決めて成し遂げるために、1+1=10くらいの力を発揮する男らしい。


 つまり、性欲にバカ正直で、そのエネルギーを仕事に活かせるヤバイ奴だった。


 そして、基本は頭がよく仕事のできる男だ。


 社内規定をすみずみまで読み込み、役員の側近に取り入って根回しを行い、組合を焚き付けて意見を出させ、1ヶ月後には社内規定ごと待遇を変更させてしまった。


 海外にいたときも、一人で大きなプロジェクトを何個も売り込み、それは大活躍だったそうだ。


 奈津美は、堤に田辺の頑張りで、産休育休中の女性の仕事をフォローする役割の社員は、ボーナス1.6倍ということを告げた。


 堤は困ったように笑う。というか、引いている。

「まさか・・とは思いました。でも、約束ですので…」

 堤は、約束したことを無にできない程には、きちんとした日本的な女性だった。


 そして、田辺には進藤から名前を告げ、

後はお二人で・・とそれ以降のことは丸投げした。



奈津美は、進藤から一頭買い和牛の焼肉店の豪華コースをおごってもらいながら、結局お食事をする友達から、仲を始めたことを知る。


「堤さん、結局押しきられたんだね。」

田辺が苦手な奈津美はちょっと残念な気分でもある。

スペックが激高の男を振ってほしかった。


「先輩、かなり熱心に口説いたらしいよ」

「でも、なんで田辺さん、堤さんみたいな地味な学級委員タイプが好きになったのかな?

どちらかというと、ギャルっぽい感じすきそうじゃない?」

奈津美がタンを裏返しながら言う。


「あのなぁ、どんなにそれまで派手な女の人が好きでも、最後はちょっと地味目でちゃんと家庭を守ってくれそうな人がいいんだよ。市川蟹の助だって、最後は清楚な女子アナだったろ?」


「なにそれ~、最後は結局女子アナが好きなんじゃん」

「そんな睨むなよ、一般論だ。

俺だって、結婚するなら、ふ、普通の女の子の方がいいし」

赤くなって、じーっと奈津美を見る進藤。

「はあ、女子アナが普通っていうのがもうね、夢見すぎだよ。

まあ、ガンバってね」

奈津美はすでに、焼き肉のどの部位を食べているかわからないが、白米とたれが最高だから気にならない。


「…おう」

がっかりした様子の進藤は、コークハイボールでハラミを飲み込んだ。



そして、その4ヶ月後、田辺と堤が結婚したことを知る。


社員食堂で奈津美が堤と会って、その後のことを聞くと、なんとすぐに妊娠して、そのまま入籍したらしい。


奈津美はびっくりしておめでとう、すらすぐには出なかった。


堤は言う。


「育休の借りは、やっぱり育休でしか返せないと思ったから、意地でも会社に残ることにしたの。」


奈津美は思う。

(やっぱり、不公平を根に持って、仕返ししてるじゃん!

育休問題は、一つ対策しても、絶対どこかで歪みがくるよね!)


それでも、田辺夫婦のおかげで、鶴安商事の女子職場は、少しはギスギスがお金で緩和され、育休で仕事を被った社員が気晴らしでドカ食いするようになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ