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こちら、裏総務部 秘密処理課  作者: 流山 直喜
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こちら、裏総務部 秘密処理課 9エピローグ


クラブに夢香も呼んで、静香、行成、進藤、貫田、奈津美で話し合った。


行成が出した条件は、正社員として採用したい、夢香が成人する5年間は解雇しない、それ以降も雇用は継続出来る。

手帳とUSB、その他のすべての黒革の手帳に関する情報を行成に渡し、今後一切関わらないこと。


夢香の条件は、家庭教師を受験が終わるまで無料で続けることだった。


静香は「結構留守中に入られたことがあって、そろそろ本当に怖くなってた」「正社員嬉しい」と言い、承諾した。


確かに、女性二人暮らしだと怖いだろう。


夢香が「お母さんと普通の時間にご飯を食べて、普通に暮らしたい」と言ったのが、一番大きかった。


こちらの交渉も成立した。



「夢香ちゃん、合格おめでとう、凄いじゃん」

進藤は、夢香の公立高校合格の連絡を聞いて、お祝いに行った。

なんせ、2ヶ月間も家庭教師をしたのだ。

土日も、プライベートの時間で夢香の勉強に付き合った。


「これ、合格祝いね」

「図書カード!おじさんじゃん」

「漫画読むかなって」

「今時漫画は、電子ブックだよ」

進藤は、新女子高生に打ちのめされた。


「でも、本当にありがとう。

進藤先生も頑張ってね」

「何を?」

「お母さんが言ってたよ。進藤くんの奈津美さん目線はカモにされる時の男の目だって」

「は??」

「誕生日プレゼントに、ネックレスあげたんでしょ?独占欲の強い男がやることだよね」

「いやいや、そういうんじゃねーから。仕事でホステスやってるの、可哀想だったから・・」

「はぁ、そんなんじゃまだまだだね、ってお母さんも言ってた。

まずは、意識してもらうことからだね」


(この親子は、なんという話をしてるんだ!)


進藤の話をきっかけに、静香、夢香親子は、会話が増えたようだった。



奈津美は、やっとラウンジの仕事が終わり、総務第三課に帰ってきた。

地下の事務的な空間と、貫田の、のほほんとした空気にホッとする。

あの夢幻のような銀座のクラブには、一生二度と行かないと思う。


鎖骨に手を当てると、誕生日に貰ったネックレスがある。


「課長、ありがとうございます。こんなのまで経費で落として頂いて。

男の人に貰ったの始めてです。」

(本当は彼氏が良かったけど、彼氏なんていつできるかわからないから、貰えればなんでもいいや)


「それ、経費じゃないよ。進藤くんから」

「は?」

「ただの誕生日プレゼントだよ」

「はーー?」


(これ、3万はするよ)


次の日に進藤のところに行き返品を申し出たが、「今さら返されても困る、仕事のボーナス現物支給、つけててくれたら一番嬉しい」と断固受け取りを拒否され、押し付けられる。


ホステスの仕事のボーナス現物支給と思い、受けとることとした。

(おぼっちゃまは、金銭感覚おかしいよ)



「静香さん、もう2階終わったの?」

「はい、照代さん」


静香は、掃除のお姉さんとして、亀安商事に出入りしている。

大きな会社のため、奈津美も進藤も、恐らく一生すれ違ってお互いを認識しないだろう。


会社としては、手元に置いてしばらく監視したいこともあり、採用はちょうど良かった。


真面目に働いて、先輩の掃除のおばさんとも上手く行っているようだ。


「娘さん、高校入ったんだって?」

「はい、写真見てくださいよ~」

「まあ、可愛いいお嬢さんね」


写真は、入学式でセーラー服を来た夢香と、白いスーツの静香が、満開の桜の木の下で、満面の笑顔で写っていた。


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