5/7
第005戯 防御力に全振りした男
「なんだこいつ、全く刃が通らないぞ!」
「なんという体の硬さだ! これではどうしようもない!」
彼の腹に刃を突き刺した男は驚嘆の声を上げた。
それもその筈、彼はずっと体を鍛え続けていたのだ。
生活の全てを体を強くする事に費やしてきたといってもいい。
そのおかげで彼は皆から一目置かれ、屈強で頑強な男として仲間や家族から絶大な信頼を寄せていた。
だが、そんな防御力に全振りした人生も終わりを告げようとしてきた。
彼は先ほど、腸閉塞でこの病院に緊急搬送されたのだ。
手術室で医師がもう一度絶望の悲鳴を上げる。
「なんだよこの患者! 腹筋が硬すぎて小刀が通らない! これでは手の施しようが無い!」