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7 保育士に就職できたけど質問ある?


 あれから数日。

 男奴隷たちはいつもの仕事を終えたあと、適正を調べるために様々な作業に従事するようになった。希望者のみということだが、報酬もつくのでほとんどの奴が積極的に仕事に奮起したらしい。ちなみに報酬は肉だそうだ。

 そんな中俺は試しに提案した子供の相手というのを仮でやらせてもらっている。ようするに前世の保育士のようなものだ。ちょっとセクハラぎみな保護者やパワハラぎみな同僚がいないという環境は天国だなぁ、と幸せを噛み締めながら子供たちの面倒を見る。


「とはいえこの世界の常識がわからないから迂闊なことは教えられないんだよな」


 保育園では簡単な道徳…例えば人のものを勝手にとってはいけません、だとか殴るのはダメとかを教えたりもする。しかしながら、この女権国家は男のものはとってもいいみたいな風潮がある。この辺りのさじ加減がさっぱりわからないのは問題だ。

 一応5歳を越えると女の子は教育が始まるらしいので、そこからこの国風に教育してもらえばいいか。


「よぉ、頑張ってるかい?」


「あ、こんにちは。皆いいこたちで助かってますよ。えーと…」


 今子供たちはお昼寝の時間だ。一部寝たくないとグズるおませな女の子もいるが、ちゃんと寝ないと強くなれないよと諭したところ、とりあえずは寝転がってくれた。

 そんな折りに一人の女性が声をかけてきた。

 何度も見た顔だが、名前をしらなくて一瞬止まってしまう。


「アタシはターニャっていうんだ。あそこで寝たくないってグズってたアイニャの母親だよ。アンタよくあの子に言うこと聞かせられたねぇ」


「あぁ、アイニャちゃんの。

 アイニャちゃん、お母さんが大好きみたいですよ。お母さんみたく強い戦士になるんだーって張り切ってましたから」


「おや、そうなのかい? アタシの前ではそんなこと一切言わないのにねぇ」


 なるほど。アイニャちゃんは今まさに反抗期というやつか。

 この世界にそういう言葉があるのかはわからないが、子供の特徴は共通っぽいな。

 であれば、お母さんにもフォローが必要だろう。


「あのくらいの年齢になると自我が芽生えて、照れ臭いっていう感情もちゃんとありますからね。大人みたく自分の体がうまく使えなくて癇癪を起こしたり、無意味に反抗したくなったり…色々です。

 僕にはかなりお母さん自慢をしてくれましたよ。強いんだよとか、かっこいいんだよ、とか」


「なるほどねぇ…あのアイニャが」


 この反応を見るに、ターニャはアイニャの理由がわからない反抗に結構手を焼いていたのかもしれない。アイニャの話から判断すると、ターニャは軍部の偉い人らしい。それで自分も同じくらい偉くなるから、他の子よりも早く勉強しなきゃいけないと言っていた。勉強の時のお母さんは厳しくて嫌い、とも。他の子が遊んでるのに勉強っていうのはしんどいよなぁ。

 でも、ターニャだって立場があるし、しんどいと思う。反抗期が原因で子供を愛せなくなる親御さんもいるもんなぁ。こういうのはちゃんとフォローしとかないと。


「アイニャちゃんは女の子だから躾や行儀作法もちゃんとしなきゃだから大変ですよね。

 でもそういう大変なことって、愛情からくるものだってわかってくれれば結構ちゃんとしてくれるものですよ。

 勉強は大事ですけど、同じくらい甘やかしてあげてください」


「…だが、甘やかしては今後あの子が困る」


「じゃあ、ちゃんと終わったあとはうんと誉めてあげるとか。

 将来は偉くなるんでしょうけど、まだ5歳ですからね。抱き締めてあげたり、頭を撫でてあげたりとかも大事です。愛されてるんだなってわかるから子供だって辛くてめんどくさい勉強も頑張れるんですから。ごほうびは大事ですよ、大人も子供も」


「ごほうび、か」


 そういうとターニャは黙り混んでしまった。なにかを考えているのだろう。 


「あぁ、憎まれ役っていうのも必要かもしれないですねぇ…」


 考え込むターニャをよそに俺は思い付きを口にする。

 あっちの世界だって教師っていう憎まれ役が様々なことを教えてくれる。無駄に厳しいとかは論外だけど。家族じゃない人が様々なことを教えて憎まれ役になってくれている分、親に憎しみがいかず思う存分家で甘えられるわけで。…最近じゃそういう家庭も少なくなっている気もするけれど。


「憎まれ役?」


「やっぱり勉強ってしんどいじゃないですか。

 で、そのしんどいことを教えてくる人のことってどうしても嫌いになりがちなんですよね

。だったらいっそ、そういうしんどいことを専門に教える人が憎まれ役になってくれれば、その分家で甘えられるのかなーと思いまして」


「憎まれ役兼教育係り、か」


「そうですそうです。でも憎まれ役ってあんまりやりたくないですよねぇ」


「現役の母親となると確かにな…」


「あれ? じゃあご年配の方にお願いすればいいのでは?」


「…一考の余地はある。ありがとう、いいことを聞いた。

 早速試せるよう何人かに打診してみよう」


「あ、それなら幼児の方にもどなたか来てもらえませんかね?」


「幼児? なぜだ?」


「いや、俺男奴隷なものでこの国の常識? というものがわからないのですよ。

 だからどの辺りで叱っていいのか皆目検討がつかないんですよね。でも小さいうちからちゃんと常識はわかっておいたほうがいいじゃないですか」


「…なるほどな。了解した」


 了解してくれたらしい。

 これでこの国の常識における躾も心配ないな。ターニャが柔軟な思考の持ち主で助かった。アイニャともこれからうまくいくといいんだけどな。


 さて、じゃあチビちゃんたちを起こして適当な物語の読み聞かせでもしようかな。

 こんな感じで異世界保育士兼種奴隷にジョブが増えた。お母さんがたも不安だろうし俺の保育士知識がうまいこと役にたつといいんだけどなぁ。

 子育てについての質問ある? って、聞いてみようかな。



閲覧ありがとうございます。

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