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5 なんかやりたいことある?


 領主様専属種奴隷となった俺はさらに時間をもて余すようになった。

 何せ仕事は領主を妊娠させること。そのための環境を整える助力。それから、万が一俺が子の父親になったときのための教養を持つこと。このくらいしかやることがない。

 いや、次代の領主の父親としての教養ってどのくらいのものを求められるのかわからないんだけどさ。めちゃ高い水準を求められるのであれば、今からガッツリやらなきゃなんだけど、追いたてられてないからそこまででもないのかなって。ここ女権国家だし。

 ともかく、暇をもて余しているのだ。


「やっぱ人間って、適度な仕事と楽しみがないとダメなんじゃないか?」


 社畜保育士時代はひたすら休みを求めていたが、いざ休みばかりとなるとこれがもう大変暇だった。暇を潰せる娯楽を考える方が健全かもしれない。


「でもさー。何度も考えたけど最終的に暇が潰せて、できればなんらかの生産性があってとか考え始めるとそれって結局仕事みたいなもんなんだよな。

 要するに何事もバランスが大事ってことかぁ?」


 では、何で暇を潰すか、である。

 目下リックがしなければいけないことは、領主であるクルシュを妊娠させることだ。

 では、どうしたら妊娠するかという話だが、これはもう授かり物なので確実な方法はない。ただ、今までのヒアリングから睡眠時間の不足や多大なストレスなどの問題点は発見できた。

 じゃあそれを解決すればいいという話なのだが。


「領主様ってどんな仕事するんだろ?」


 現代日本で保育士として生きてきたので、そのあたりはさっぱり想像がつかない。安易に手を出してはいけない分野などもあるだろうし、下手に提案して不興を買い首と胴体が離れるのはごめんだ。


「どんな仕事があるにせよ、奴隷たちの午後がめちゃ空いてるのは事実なんだよな。

 適材適所でやれることがあれば一番いいわけだし…。時間もあるからみんなにも聞いてこようか」


 思い立ったが吉日。

 慣れ親しんだ奴隷部屋へと向かった。




「はぁ? やりたい仕事? そりゃおめぇ…特にねぇな」


 奴隷部屋に顔をだし、馴染みのメンバーに聞いてみたところ、だいたいがこのような返答だった。まぁ確かに積極的に働きたいというモノでもないだろう。


「じゃあやりたいこととか?」


「お前変なこと聞くよな。奴隷にそんな希望あると思うか?」


「いや、奴隷でも希望はあるだろ。

 実際昼飯食ったあとってなにもすることなくて暇だろ? その時間にやりたいこととかさぁ」


 そう問いかけてみると、リックと同じくらいヒョロい男がポツリと呟いた。


「美味しいご飯、食べたいかな」


 その声が呼び水となったのか、口々に希望を述べだした。やっぱりあるよなーやりたいことしたいこと。


「だよなぁ。不味いわけじゃないんだが、俺には量がちょっとばかり足りんな」


「食わねーと力仕事も効率わるいしなぁ」


「量も欲しいが質も欲しい。野菜ばっかじゃ力でねーからな」


「ふむ。肉とか魚とかがもっと欲しいって感じ? あと味はなぁ…料理研究するやつでもいればいいんだけど」


「そりゃ材料と場所があれば料理くらい俺たちでするけどよ」


「材料は…この辺りで狩りとか釣りできないのかな?」


「そりゃお前…勝手に奴隷が敷地から出れるわけねーじゃねぇか」


「なるほどなぁ…。例えばだけどさ。仕事の量が、夕食時間くらいまでの日が増えるけど、週1くらいで狩りとか釣りに行けるとしたらみんなはやる?」


 俺にはまったく権限はないけれど、根回しするくらいだったらいいだろう。

 たぶん今夜もクルシュ様と会うことになるだろうし。俺に話す体力が残っていれば打診してみたいと思う。


「仕事内容によるが、そりゃ願ったり叶ったりだわな。週1でも旨い飯にありつけられるならやる気が違ってくらぁ」


「内容が書類整理だとかでも?」


「いや、お前…それはそもそも文字が読めねぇやつにやらせるもんじゃねぇだろ」


「まぁそうなんだけど。みんなにもできる仕事ってなんだろ?」


「そりゃ肉体労働だろ」


「それしかやったことねぇもんなぁ」


「なるほどなるほど。

 教えてもらえば肉体労働以外もやる気はある感じ?」


「旨い飯があって、俺らにやれることならそれなりにはするさ」


「確かに向き不向きはあるもんな。俺は肉体労働不向きだったもん」


「そん代わり裁縫だの細かいことはできただろ。お互い様だ。

 …んで、お前、そのなんだ。種の方は向いてたのか?」


 少しきまずそうに言われる。もしかして、奴隷たちの中で種奴隷はあまり嬉しくないものなのだろうか。


「んーどうなんだろ? ある意味肉体労働よりしんどいかもしんないけど、いやってほどでもないよ。そもそも選択権がない。

 というか、みんなの中で種ってどういう位置付けなの?」


「キツイ」

「しんどい」

「死の危険がある」

「できればなりたくない」


 なんの気なしに聞いたが結構忌避される奴隷のようだ。もしかして、ここが薄汚いのも選ばれないための工夫だったのかもしれない。


「俺らが子を持ったとしても、女なら召しあげられて、男なら俺らと同じ奴隷人生だろ?

 あんまりメリットがなぁ…」


「お前の場合領主様の相手だから特別だけど、通常の種奴隷は色んな女性のもとに通って最後は搾り取られて衰弱死とかもあるらしいぜ」


「いやでも領主様に無事子供ができたら今度はお前他のお偉いさんのところ回るかもしんねえし、それはそれでしんどくねぇか?」


「えっそうなの?」


 それは初耳の情報だ。


「そりゃお前…領主様はしばらく恵まれてなかっただろ? そこで、お前が妊娠させたら優秀な種認定されて引っ張りダコに…」


「えっ…まじかぁ」


「でも出来なきゃ出来ないでたらい回しで搾られるだろうから…うん、強く生きろよ」


「なるほどな。だからみんな嫌なんだ…」


 そんな状況であれば種奴隷は忌避されるわけだ。

 俺はどうなるんだろうなぁ。元保育士の子育てスキルの話をしたらたらい回し回避できないだろうか…。DTを卒業したばかりだが、あれを連日と言われてしまうと正直な話ものすごくしんどい。衰弱死がリアルに見えてきてしまう気分だ。

 どうにかして待遇改善をはからなければ命に関わりそうだ。

 




閲覧ありがとうございます。

少しでも面白いと思っていただけましたらブクマや評価をよろしくお願いいたします。

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