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4 専属奴隷になったけど質問ある?


 どえらい情熱的な一夜を過ごした次の日。

 俺は久々のふかふかオフトゥンさんにつつまれて盛大に寝坊をした。


「やべっ遅刻…いててててて!?」


「おはようございます。お目覚めですか?」


「うぇ!? あ、はい。おはようございます、起きました。直ぐに仕事に…」


 奴隷の身分で朝寝坊とはいい度胸だな、と言われかねない。直ぐにいつもの仕事に向かわなければ…。

 日の高さから考えると、朝飯抜きで午前の作業に入らなければならなさそうだ。


「いえ、あなたは今までの仕事とは違う仕事についてもらいますので。

 まずはきちんと食事をとってください。

 心身共に健康でないと妊娠はしにくいのですよね?」


「え、あ、はい。そうですけど…えーと…あなたの名前は…」


「ナージェと申します。

 クルシュ様が正当な跡継ぎになるためにも、一日も早いお子様の誕生が望まれています。

 あなたのこれからの仕事はそういうことで、私はその補助として選ばれました」


「あー…種、と」


「そうですね。

では、食事を持って参りますので。

 腰が痛むでしょうからあまり無理はしないように。食後、あなたの持っている知識についてお話を聞かせて貰う予定となっています」


 そういって彼女は出て行った。

 奴隷の相手をするのが不満なのだろうか。かなり仏頂面で、お世辞にも愛想がいいとは言えない感じだ。


「奴隷から種奴隷へレベルアップ…。なんだろう、このあんまり嬉しくない出世」


 確かに肉体労働からは解放されたけれど、色んなものを失った気がする。

 昨晩は「今日は搾り取るためではなく、快眠のための運動だから手加減はしてやろう」とか言ってたけど、正直どこが? って感じだったし…。本気で搾り取られたら俺の体はどうなってしまうのだろうか。

 ともかく、今後俺の役目はクルシュ様の妊娠というわけだ。

 ロマンもへったくれもない初夜を迎えてしまったことだけが心残りだが、まぁ奴隷だしな。命があっただけ良しとしよう。そして今後の目標は腹上死させられないようにする、って感じだろうか。昨日の時点でちょっと命の危険感じたもんな。おかげさまでナージェさんの言う通り腰が役に立たず正直動ける気がしない。


 その後。朝食を持ってきてくれたナージェさんの好意に甘えて、ベッドの上で一日を過ごすことになった。


「では、その…妊娠についてなんですが。

 今更なんですが、俺はそちらの専門というわけではないのですがいいんですかね?」


 俺の生前の職業は保育士だ。

 男の保育士というのはいないわけではないけど、そこそこ珍しい部類だろう。そのため色々な差別やら偏見があった。

 やれロリコンなんだろう、だのなんだの。俺は紳士だからロリもショタも愛ではするがノータッチ…いや、職業上触らないのは無理だけどね。

 他にも欲求不満なママさん方からのアプローチやら、同僚のよくわからないアピールやらもあったりする。なので、それらをかわす為に、そして子供に正しい性教育を行うためにそれなりに知識を仕入れたため、普通の男性よりかは知識があるだろう。ましてや、医学があんまり発達していなさそうなこの世界であればなおさらだ。

 とはいえ、俺の話を鵜呑みにして「領主様の御子ガーーー」とキレられても困る。そのための予防線だ。


「構いません。祈祷に頼るよりはまだマシでしょう。

 もちろん、最終的には頼ることになるのかもしれませんが…」


「かなり切羽詰まってるんですね」


「でなければ奴隷に頼るなどありえないでしょう」


「ですよねー」


 そんな会話をしながら排卵日についてや、ストレスをためないことなどの注意点を教える。

 多忙な領主様にストレスをためるなって言っても無理なんだろうけどな。

 で、一番困ったのが食べ物についてだ。この世界の食べ物がさっぱりわからない。


「ストレスをためない、はクルシュ様には少々難しいだろうな。睡眠時間の確保も…。

 それから体を温める食べ物、とは…」


「えーと…地中で育つ作物や、寒い地方でとれるものとか?」


「具体例は?」


「えーと…俺その辺りの知識がさっぱりでして…」


「おかしな具合に知識が偏っているな、オマエ」


「奴隷ですから」


「普通の奴隷はそもそも女体の知識なんぞない」


 ごもっともです。でもなぁ…実は前世の記憶があるんです、なんて言ってもいいものかどうか迷うところだ。

 つじつまは合うんだろうけど、なんでもできるってわけじゃないし…。


「まぁいい。私の仕事にお前の出自を確かめる項目は入っていないからな。

 急務はクルシュ様の妊娠だ」


「ちなみになんでそんなに妊娠を急いでるんです?」


「…そこからか」


 かなり呆れた顔をされたが、知らないものは仕方がない。


「この国の法で後継ぎは女児を生んだ女、とされているからだ」


「あーなるほど。そろそろ代替わりの時期で、クルシュ様はまだ女のお子様がいらっしゃらないんですね。

 女性が楽しみまくると男の子が生まれやすい…っていう俗説は聞いたことがありますね」


「な、それは本当か!?」


 結構な食いつきにちょっと焦ってしまう。


「あくまで俗説です。それよりもたぶん領主様は後継ぎプレッシャーがすごいんじゃないですかね?

 不規則な生活、少ない睡眠時間は本当に良くないです。

 できればゆっくりお風呂に使って疲れをとって、子作りしないで眠る日を作ったほうがいいと思いますよ」


「それが出来れば一番いいのだがな。

 まあいい。

 お前はしばらくクルシュ様付きの種奴隷だが、御子の親になれば多少の教養も必要となるだろう。確か文字を学んでいたな? 暇そうなやつを見繕って教えてやる。あとは図書室の出入りも許可しよう。少しは常識を学んでくれ。

 …それから、もし領主様の生活で気になるところがあればすぐ言うように」


 そういってナージェさんは去っていった。

 こうして、俺は専属種奴隷になってこの世界のことを学ぶ機会を得られたんだけど…これからどうなるんだろうなぁ…。

 

閲覧ありがとうございます。

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