3 DT捨てさせられたけど質問ある?
状況を整理しよう。
俺、リックは今豪華なベッドのある豪華な部屋で全裸だ。変態ではない、変態だとしても変態という名の~というセリフを因襲している場合ではない。そもそも、本当に変態ではないのだ。この女権国家でも権力のある女性たちにひんむかれ、あられもない場所までキレイキレイされて、その後全裸なのだ。
…穴があったら埋まりたい。
穴はないし、服もないので選択肢としてはベッドに入る他なかった。適温とは言え自室でもない場所で全裸で立ってられるほど俺の肝は太くない。
ただ、悲しいかな女性たちにあちこち触られたもとい洗われたせいもあり、愚息は太くなっていたりする。ギャグならばどんなに良いか。
さて、これからどうするべきか。
いや、選択肢などはとうの昔に失っているのだが。だって俺、奴隷だしね。
今の自分にできるのは、この身に何が起こるのかを予測して、耐えるのみだろう。
では、ここでクイズです。これから何が起こるでしょうか。
「…いやまぁ…そういう展開なの?」
種と言われ、全身を綺麗にされて、全裸でベッドのある部屋。
ここまでされて気付けないほどウブではなかった。前世も含めてDTの俺だが、まさか異世界に来てこんなところで捨てるハメになるとは…。
「いやでも領主様は奴隷の種で良いワケ?」
領主様が来ると彼女たちは言っていた。
その相手がただの奴隷で良いものなのか。この世界で生きてきたリックの記憶を辿ってもその辺りはさっぱりわからない。
「待たせたな」
「うひぃっ!?」
モンモンと考え込んでいると、部屋のドアがバーンと開いた。そこに立っていたのは年の頃は20半ばほどに見える迫力ある美人だ。
勝手知ったる自分の家だろうから、ずかずか入ってくる。そういう様子すらも
「さて、さっさとヤるか」
「あのー…ヤるってーと…」
「気にするな。オマエは寝てるだけでいい。
顔も悪くない上に若い、子の期待が持てる」
言いながら豪快にバサバサと衣服を脱ぎ捨てる彼女。名前も知らない人で脱童貞かぁ。いや、かなり美人だしスタイルも凄いから役得なのかもしれないけど。
「子供、欲しいんですか?」
「種を欲するのだ。当然だろう」
「奴隷の子でもいいんです?」
「…このままでは、我が家をあの愚妹が継ぐことになる。それを阻止するためなら、奴隷の子であろうとも。
そもそもオマエが種の主かどうかなどわかるわけがなかろう」
何やら事情があるらしい。だから、奴隷にまで手を出してなんとか子作りしようとしているのか。
「まぁ確かに今子作りをしたとして俺の子かどうかなんてさっぱりわからないのは確かです。
ところで、今日は排卵日ですか?」
「…なんだその、ハイランビとやらは」
うん、なるほど。
奴隷の環境からも推測できたけど、この辺りの文化レベルはそんなでもないらしい。しかしどう説明したものか。こういうデリケートな問題を身分の低い男の奴隷が口にしていいのだろうかと悩む。
が、それでも一応知っている知識は言っておくことにした。そうじゃないとフェアじゃない気がするから。
「排卵日とは女性が妊娠しやすい日です。
失礼ですが妊娠しやすくするためにいくつか質問しますね。
生理…えーと、血が出る日の周期は一定ですか?
あと睡眠はちゃんととっておられます? 睡眠不足やストレスは妊娠の大敵です。領主のお仕事がたくさんある上にその跡継ぎ問題で切羽詰まってるのでは?」
かなりの迫力美人ではあるが、よく見ると疲労の色が濃い。肌も荒れているように見える。
「血が出る周期は…普通は一定なものなのか…?」
「女性同士でもあんまりそういう話はしないんですかね。そのあたり男の僕ではよくわからない感覚ですが…。
周期はだいたい一月に一回というのが健康な証らしいです」
「周期は一定ではない。というか、数ヶ月こないことも…。
それが毎回怖いのだ。あの痛みは耐えがたいが血が出ないともう女ではないのだろう?
私はもう子を望めぬのではないかと…」
「子を望むのであれば母体が健やかじゃなきゃダメですよ。あまり思い詰めてはいけません。
…女性に年齢を聞くのは失礼かと思いますが、今おいくつですか?」
切羽詰まった表情が抜け、すがるような目で質問に答える彼女。生理の周期やら普段の睡眠時間まで様々なことを聞いてみる。
現代日本であればセクハラ断罪待ったなしかもしれないが、妊娠を望む彼女のためと思って許して欲しい。といっても俺の知識もそこまで充てになるかはわからないのだが。知ってるの、一般常識程度なんだがなぁ。
とりあえず、年齢は26らしいので閉経ということはないだろう。睡眠時間含めた生活がめちゃくちゃ不規則で多忙。こりゃストレスマッハだな。奴隷がこんなにストレスフリーなのに、かわいそうなことだ。
「えーと、最後に…」
「なんだ?」
「お名前、うかがってもいいです?」
「っ!?
…そうか。名乗る余裕すら、私は持ち合わせていなかったのだな」
「常に緊張を強いられているような状況では妊娠はしづらいと言われていますね」
「そうか…ありがとう。
私はここの領主を努めるクルシュ・ナディーンという」
「偉い人に不躾な質問をしてすみませんでした。
僕はリックと言います。
で、先程の質問の結果から言うと今日は子作りをしてもあまり結果は得られないかと思います。それよりも、きちんと休息をとることをおすすめします」
「君はその知識をどこで仕入れたのだ?
ただの奴隷には思えない…そもそも、ただの奴隷が女の体を知っているわけがないし…」
「ちょっとまぁ色々ありまして…」
ここで「怪しい奴め、引っ捕らえろ」とでも言われてしまえば俺の人生は詰む。慎重に受け答えをしなければ。
「それで誤魔化されると思ったか。
まぁいい。本能に忠実なはずの男がその状態で理性を保ったことに免じて一度だけ信じてやろう」
うっ。それはまぁ仕方のない男の反応と申しますか…。
半裸の美人が目の前にいたら仕方のない反応だと思う。
「だが、私はまだ眠くない。
寝る前に運動するのは日課のようなモノだからな。
ということで、じっとしていろ。すぐすむ」
「えっえっ……!!!!???」
その夜。
俺はそりゃあもう美味しく頂かれてしまった。
残念ながら質問の受付はここで終了にする。…男の矜持がぼろぼろな時点で察して欲しい。
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