第7話「自分であり、自分でないもの」:A2
「おっと。隊長さんが何の用ですか」
不意を打つように現れたレイアの方を向き、男が芝居がかった調子で問いかける。
「そこにいる新入りの呼び出しだ。ここにいると聞いて来たんだが……穏やかではないな?」
「まさか、ただの顔合わせですよ」
嘘であることは明らかである。
イナは再び怒りを刺激されるが、肩に触れたディータの手に力がこもるのを感じて、なんとか抑えこむ。
レイアもイナの方をちらと見、この状況を把握したようだ。
目をわずかに細め、言葉を選ぶように咳払いをした。
「何にせよ、要件は後にしてくれるか。こちらは至急だ」
「へえ、随分とお忙しいんですね」
「そうだな、じきにお前たちとそう変わらなくなる」
それが皮肉を込めた言葉であることは、イナはさすがに気づく余裕はない。
しかしそれは皮肉と思えばそうなるというだけで、実際には言葉通りでもあるのだろう。
つまり当たり前ではあるが、イナはこれから、今よりも責務に追われる可能性が高い。
暇になるという意味合いで受け取るのは、想像力の欠落であり短絡的であると言える。
ので、顔を不快そうに引きつらせた男たちは、そういうことだ。
彼らは文句ありげな視線を残して、この場を後にする。
レイアはそんな彼らの背中を見送りながら、困ったような溜息を吐いた。
「では、ミヅキ。……なんだ、体調不良か?」
歩み寄り、イナの顔を覗き込んだ彼女はディータに問いかける。
「はい。どうしてもというのであれば、私を付き添わせていただけますか」
「それほどかは分からないが、できるうちにしておいた方が良い案件だ。お前に問題がないなら構わないが」
「問題はございません」
「ミヅキは?」
此方を向いたレイアの視線から反射的に目を逸らしながら、イナは口を開く。
「……大丈夫です。少しはマシになりましたから」
「そんじゃあ僕はテキトーに走っとこーかなー。じゃあまたねイーくん! びゅーんっ!」
一気にまくしたて、漫画のような大袈裟な効果音を自分の口で発しながら、アヴィナの背中はあっという間に遠くなる。
その元気を見て少しだけ回復したイナは、ディータの肩を借りながら立ち上がる。
「では、向かおうか」
レイアのその一言でイナはようやく、この場に漂う重々しい空気から解放された。
□ □
先日も訪れた、司令室の前。
そこでレイアは一人で部屋に入り、紙とペンをはさんだ黒いクリップボードを持って出てくる。
「ラルと準備をしてくるから、少し外で待っていてくれ。その間、これを頼む」
何のことか分からないままイナはボードを受け取り、レイアはまた部屋の中に入っていく。
なんの紙かと見れば、《隊員申請書》と書かれた、一見すると履歴書のようなものだ。
隅々に目を配っていると、日付が前日のものになっていることに気づく。
「……間違いでは?」
ディータに問うと、困ったような笑顔が返ってくる。
「少々、複雑でして。イナ様に不都合なことはありませんので、お気になさらず書いていただければ」
――ってことは、こうじゃないと困る人がいるんだろうな。
「先日の出撃で、イナ様はあの時まだ隊員ではありませんでしたから。下手にそれが知られれば、PLACEが民間人を無理に戦わせたということになりかねません」
「一応でも、その時は隊員だったってことにしとかないといけない……て、こと?」
「その通りです。分からない所は空けたり、私にお聞きしても構いませんので」
「ふむ……」
イナはペンを取り、その場にしゃがみこんでボードを安定させ、名前や年齢、性別、生年月日、出身地といった個人情報を書き込んでいく。
身を置かせてもらっているとはいえやや不用心ではないかとは思ったが、どうせこの世界において彼は公的には存在していないのだ。
そのほか、役職の希望や特技を書く欄があったが、既にエイグに乗って戦うことが決まっている以上は、書いても意味が無いだろう。
「一応、エイグ搭乗者とお書きください。エイグの搭乗経験がある方でも、他の役職に就くことがありますので」
「へえ……」
「私もそうですから。成り行きで乗ってしまったものの、戦闘に向かない場合などは認められています」
――……さらっと衝撃的なことを。
言われた通りに書きながら、イナは顔を引きつらせる。
自分も成り行きでエイグに乗っているため、その時の状況や乗った後の出来事が決して楽な事ばかりではなかったのは想像に難くはない。
「特技は……ヒュレプレイヤーって書けばいいのか?」
「いえ、それは一応お控えください。内部での情報管理はいくら気を付けていても、どこかから漏れ出てしまうものですから。我々が知っていれば十分かと」
「じゃあ、あとは……」
と、下の欄に目をやる。
エイグ搭乗者のうち、既に機体を所持している者用のものが用意されているらしい。
と言っても、精々機体の名前や、機体の疑似人格AIの下となった人物やその関係くらいだ。
――幼馴染、でいいんだよな?
シャウティアに搭載されたAIの人格は、イナの中にあるチカの記憶を基にしている。
そんな彼女との関係をどう書けばいいのか、彼は無駄に迷っていた。
さすがに、恋人だなどと嘘や願望を書くわけにはいかない。
わずかに頭を悩ませた後、イナはチカの名前とともに、関係の欄には友人とだけ書いておいた。
念のため、チカの名字を書くのは控えている。
「これ、なんかの参考になるのか?」
「エイグ研究の一環です。中には亡くなってしまった家族や、架空の人物を基にするという例もあるそうですので」
ふうん、とイナは興味なさげに返す。
「じゃあまあ、これでいいかな」
一応のチェックのため、ディータに渡して確認を頼む。
このデータに何ら意味があるようには思えなかったが、PLACE所属の為には必要なのだろう。
通過儀礼のようなものだと思うことにして、イナは深くは考えないようにした。
「はい、これで大丈夫です。しかし隊員同士とはいえ、個人情報を見せるのは不用心ですね」
「え……」
イナがディータも信用してはいけないのかと、今度はそのショックを明確に表情へと滲ませる。
「半分冗談、半分本当です。相手が相手なら悪用される恐れもありますから」
「あ、ああ。そういう……」
ネットリテラシーを説教くさく伝えられるのと同じような感覚に、イナはさして気にすることでもないと安堵する。
そういった思考回路が、まだ子供である証拠なのだが。
「では、もうしばらく待っていましょう」
ボードを返してもらい、二人は室内で準備中だというレイアとアーキスタを待つ。
しかし数秒や数十秒待ったところですぐに来るようなものでもなく、すぐに二人の間に沈黙が生まれる。
「……そういえば」
と、イナは無意識下の記憶の整理中に出てきた疑問を口にする。
「どうしてレイアさんはアーキスタさんのことをラルって呼ぶんです?」
「あら、敬語ですか?」
「あ、えっと……」
無意識に口調が変わっていたことを指摘され、慌てて言い直そうとするが、ディータは微笑んでそれを止める。
「いえ、良いのです。少し意地悪でしたね。それで、レイア様がライルフィード様をラルと呼ばれる由縁、でしたか」
「あ、ああ」
「特に深い意味はないのですが、当時お互いにPLACEに身を置いて間もない時期だったこともあり、また役職からして自然と親しくなったのでしょう」
「そういえば、レイアさんは隊長って言われてたな……」
「PLACE全体でも指折りの実力を持つお方ですから。誰もがその力を認めています」
イナは彼女の戦闘をまだ見たことがないために何とも言うことはできなかったが、先ほどの男たちが素直に去ったところを見るに、彼女の持つ力は決して小さくないことを理解する。
「ですので、それは一種の友好の証なのでしょうね。ライルフィードを省略したのでしょうが、レイア様らしいセンスだと思います」
「なるほど……」
ある程度想像できていた答えではあったが、《アル》と省略しない理由が分かったため、イナはこの疑問を納得に終える。
そこでようやく、タイミングを見計らったかのように目の前の扉が広く。
中では空調が効いているらしく、程よい冷気もともに漏れ出して来た。
「すまない、待たせてしまった。入ってくれるか」
「あ、はい」
「では、私は少し離れますね。イナ様の顔色も戻ったようですし……頃合いを見計らって、また迎えに上がります」
「えっと……ありがとう、ディータ」
今度は口調を間違えないように、お辞儀をするディータに声をかける。
イナ自身、普段感謝の気持ちを口にすることがなかったため、発現した後で妙な恥ずかしさを覚える。
ディータの方も意外だったのか、一瞬だけ目を丸くしてまたいつもの微笑みに戻った。
イナはそれを見送り、部屋の中に入って扉を閉める。
「ディータに気に入られているとは大したもんだな」
直後かけられた声は、ここで目覚めて間もなく会った時と同じ青年の声。
眼鏡をかけた、立派な席に座す青年――アーキスタ・ライルフィードだ。
不思議とあの時と印象が違って見えるのは、イナがこの人間の指揮下に正式に入ったからだろう。
「申請書を見せてくれるか」
「あ、はい」
ペンをはさみ直して、イナはクリップボードごとアーキスタに渡す。
ありがとう、と言いつつ受け取った彼は、じっくりとイナの書いた申請書に目を通していく。
「2028年生まれの15歳……改めて見ても違和感凄いな」
「と、言われても……」
イナは自分にとっての真実を書いただけで、遊んでいるつもりはない。
「申し訳ないが、ここは多少手を加えてもいいか?」
「と言うと?」
「今は西暦2032年。これだと2028年に生まれた君はまだ4歳だ」
さすがにイナを見て4歳だと思う者はいないだろう。
「つまり――ええと、2017年に生まれたことにする、と?」
「形式上な。PLACEの司令達には伝えているが、さすがに異世界からの人間だと誰もが信じるわけでもないし、それこそ組織自体への不信感を生みかねない」
「いや、既に生んでいる」
補足するように会話に割り込むレイアに、アーキスタは抑える様子もなく苦い顔をした。
「マジで?」
「先日の戦闘で、シエラを除く全機が行動不能になった時点での出撃。そして無傷での生還。本来ならともに出撃し、無駄な損害は出さずに済んだはずだ――と、自然な反応が散見された」
「……っと、別に君を責めているわけじゃない。正確には、少なくとも俺達は、だが」
「いや、その。さっきもあったので……」
先ほどのことを思い出しながら、イナはアーキスタから目を逸らす。
怯えを見せる彼に対し、アーキスタの方はどうしたものかと困ったような溜息を吐いた。
「大袈裟でもなく死活問題だ、こちらからも対策はする。すまないが、多少は我慢してくれるか」
「……はい」
「何かあれば、ディータでもレイアでもシエラでも、誰でもいいからすぐに言ってくれればいい。身内で諍いを起こしている場合じゃないからな」
「…………はい」
返事をするたび、イナの声は小さくなる。
どうやら先ほどの彼らのみならず、イナの参入を快く思わない者達は少なくないようだ。
それは、元の世界でのイナの境遇とひどく似ている。そうなりつつあるとも言えるか。
しかし今の彼には、過去の彼とは決定的に違う点が複数ある。
もっとも、彼自身はそれに気づいてはいないのだが。
「むろん」
と、こちらを向けと言わんばかりに少し声を張るアーキスタ。
その意図通りか、イナは驚いたように其方を向く。
「俺達は仲間を救う為に戦うことを選んでくれた君を非難する気はない。君の意思を無視した結果論も好ましくはない」
「……でも、その人たちの想いも正しいものではあるんですよね」
アーキスタの善意を無駄にするような言葉であることは、普段のイナならばあるいは気づいていたかもしれない。
だが感情の処理がいつも以上にできない今の彼にそれを求めるのは酷な話だった。
そこまで察せたのか、またもアーキスタは溜息を吐く。
「……いや、まあな。異世界から来たってことを知らないんだから、仕方ない部分は確かにある」
「だったら、それを伝えればいいんじゃ」
眉をわずかにひそめ、アーキスタが首を振る。
「そう簡単な話でもないんだ。証拠はあるとはいえ信憑性の低さは拭えないし、全員が信じるとは限らない。中途半端な受容は、それこそ諍いの素になる」
「この状況を良しとしないとは分かるが、頑固者も少なくない組織だ。結果を示し、この組織にとって有益な人間であることを示していくしかあるまい」
誰かに何かを誘導するような口調のレイア。
見れば視線でアーキスタに何か合図を送っているようだった。
「……と、いうわけでだ。PLACEの司令同士の会議で、ある作戦を計画している」
「作戦?」
「戦争状態を長引かせないための、一点突破の作戦だ。各地の連合軍基地から戦力をある程度奪ったのち、国連事務総長ファイド・クラウドの捕縛を行い、国連を解体する」
「解体って、なんのために」
「エイグを用いた復興の阻害、その大半を国連所有のエイグが行っている。その阻止がPLACEの大きな目的の一つだ」
――ん?
その言葉に、イナは引っ掛かるものを感じた。
どこかで、似たようなことを――そう、ゼライドと話をしている時だ。
「どうかしたか、イナ?」
「いや、その。国連の船にいたとき、PLACEが復興を邪魔する連中だって言われていたので。矛盾してる気がして」
「まあ、マスコミは国連の味方だからな。情報操作くらい当たり前にやるし、仕方ない部分はある」
――なら、俺は国連にいた時、そういう風に思考を寄せられていたってことか。
危うく彼らの奴隷になりかけていたのだと思うと、イナは夏にもかかわらず背筋に寒気を感じた。
ただ、イナにゼライド・ゼファンがそんなことをするような人物に見えていたかと言えば、否。
彼も一介の軍人に過ぎなかったのだろう――イナは無意識下で、そう結論付けた。
「で、話を戻すが……その作戦の実施に当たって、世界中にある各支部から精鋭を何人か選抜することになってる。既にレイア、アヴィナは確定。で、そこに」
「……俺を加えると」
「そういうことだ。詳しいことはまだ調整中だが、どうだ」
「どうって、それは」
答えに詰まる。
自分がここで何を言えば、どういったことをすることになるのかがはっきりとわかっていないのだ。
その上、イナはアーキスタの部下でしかないと思っている。このように選択権を与えられるのは、何となく違う気がしていた。
「命令された方が割り切りやすい……というのもあるかもしれんが、なるだけ個人の意思は尊重したい。それに俺個人の感情は置いておくにしても、選抜隊員の確定はまだ先だしな」
「ここで返事を急ぐ必要はない。今はただ、お前の能力を見込んでの提案をしただけだ」
ドクン、ドクン、ドクン……
イナは聴覚が段々と薄れ、自身の脈の音しか聞こえないような感覚に陥り始めていた。
――受けるべきだ。俺にしかできないことのはずだから、俺を呼んだはずだ。
イナ自身の思考。
しかしそれに反応するように、彼の中でもう一つの思考が生まれる。
――本当にそうだろうか? 自分がいなくてもいずれはこの作戦を実行していただろうし、どうしても参加する必要はないのではないか。
聞けば、それもまた、イナの思考の一面であることは彼自身にも分かった。
だがもちろん、意見は間反対だ。
――それでも、俺を呼んだということは、その負担を少しでも軽くできるってことなんじゃないか。
――自惚れるな、たかがエイグ一機だ。
――それでも、シャウティアは。
――そう、そうだ。PLACEが欲しいのはシャウティアであって、お前ではないんじゃないか?
「……!」
「ど、どうした? ほんとに今すぐじゃなくていいんだからな?」
――らしい。一旦保留だ。
彼の内部から返事はない。
イナは乱れかけていた呼吸を持ち直し、生気の弱まった緑色の瞳でアーキスタの方を向いた。
「……では、少し考えさせてください」
「ああ、まだ慣れないことも多いだろうからな。余裕ができてから考えるといい」
「……そうします」
「じゃあ、今回はひとまずここまで。隊員の登録はしておくから、とりあえず自由に過ごすといい」
「はい」
ほとんど吐息のような返事を残し、イナはアーキスタに背を向ける。
彼は扉を開くその瞬間まで、空調の放つ冷気が不安を煽っているような気がしていた。
□ □
「……いやはや、困ったもんだな」
イナが去り、レイアと二人だけになった部屋でアーキスタがまたも溜息を吐く。
「見るに、自分が戦ったのだという実感がないのだろう」
「ま、だからあえて無断出撃をとがめはしなかったが……正解だったな」
「エイグを得たことによる感情の暴走については聞いたことがあるが、あそこまで顕著なのは見たことも聞いたことがない。私たちが思う以上に繊細だぞ、あれは」
それは、会話の中でアーキスタも感じていることだった。
一部をはぐらかして少しばかり騙すような真似をしてしまったが、あの時点では何を言っても現実的ではなかった。
「どうする、今からでもイギリス支部に送るか」
「ああは言ったが、作戦への参加はほとんど決まってるようなもんだ。どこに送っても大して変わらない」
「かと言って、このまま放置するのもまずいんじゃないか」
「だからって、どう対処すればいいんだよ……」
教育者でも親でもない若人に、その答えを出せというのは酷な話だ。
いや、本職でも絶対的な答えを知っている者はいないだろう。
「……ひとまず、ディータを付き添わせる。快く思わない者達も、理解が不足しているだけだと思いたい」
「喧嘩でケガして、いざって時に戦えないなんてシャレにならんからな……」
「表面の傷のみならず、内面の傷にも注意を払わなくてはならない。まあ、これくらいは面倒を見なくてはならんだろう」
「ノーリスクででっかい戦力得ようなんて都合がいいもんなあ……」
アーキスタは物理的に重荷を乗せられたように、ずるりと溶けるように椅子へもたれかかる。
レイアは仕方ないと言うように苦笑し、ポケットの中から飴玉を一つ取り出した。
「この件は私が請け負う。お前は自分と日本支部全体のことだけ考えていろ。細かな部分は私達でなんとかする」
「……お前もお前で大変だな」
「医薬品の世話になるほどではない。お前ももう少し、他人を頼ることを覚えろ」
それだけ言い残して、レイアも部屋を出ていく。
静寂が彼を包み、空調の稼働する音だけがこの場に響く。
――お前ぐらい気軽に話せる奴がもう数人いりゃあ、それもできるんだが。
自分の関係構築能力のなさをなさけなく思うアーキスタ。
もう一度溜息を吐こうかと思ったが、その視線の先にレイアの残した黄色い飴玉が目に入る。
それを手に取り見てみれば、彼女の体温とこの気温で少しばかり溶けてしまっていた。
――あいつはあいつで、気持ちが先行してるんだけどな。
彼女の性格の一端を現したかのようなそれを開封し、口に含む。
やや粘り気を感じるそれを舌で転がしていると、程よい甘みとわずかな酸味が広がってくる。
レモン味かと思っていたが、どうやらパイン味のようだ。
――実感がないのは、俺も一緒かもな……。
天井の照明をぼんやり見つめながら、アーキスタは物思いにふける。
この戦争終結のカギを握っているであろう少年の手綱は、自分が握っている。
自分の些細な行動が、彼にどんな影響を与えるかは分からない。
頭ではわかっていても、常にそれを意識できる余裕はやはり、彼にはなかった。




