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絶響機動シャウティア-Over the Universe- 【A】  作者: 七々八夕
V《差し伸べられた》その手
135/147

第30.5話「幕間⑥」:A

「マルグリット・ヒュルケンベルクの反応がロストしました。ほかのテュポーンズ構成員は目的を達成ののち、目標地点まで撤退を済ませています」

「もう少し暴れるものかと思ったが……エイグ化が起こりやすいのが難点か。こんなところだろう」


 フェーデ・ルリジオンからの報告を受け、ファイドは無関心にコーヒーを啜る。

 元より当て馬のようなものだ、直接的にPLACEの戦力を削げるとは思っていなかったが。


(戦闘技能はある程度学習させたはずだが、感情の暴走で発揮せずに終わったか)


 それ以上に、叩き上げだったはずの相手が悪かったようにも思える。

 まあ、『こうなる』ということを知らしめるデモンストレーションの目的が果たせればいい。

 多少の戦力増強も、此方に比べれば微々たるものに過ぎず、依然として恐れるには足らない。


(シャウティアは搭乗者の不調、PLACEに渡ったルーフェンは不完全ながら稼働している……)


 マルグリットとシオンから得たデータを元に考えを巡らせるが、動揺するには至らない。

 障害の一つであるズィークも排除し、この期に及んで下手の打ちようもない。

 気になるとすれば、イナやシャウティアを助けるような、あからさまな神風が吹いていないことくらいだ。

 諦めたか、あるいは策が残っているのか。

 漆黒のシャウティアがいるだけで、どうにかなるとも思えないが。


「エフゲニーは?」

「フランス支部に向かっています。じきに目標と接触するかと」

(……少し、様子を見てやろうか)


 半端にコーヒーを残したカップを置き、ファイドは通信端末を手に取った。


「席を外します」


 自分への忠誠心ゆえに、話の邪魔をすべきでないとフェーデは部屋を出ようとする。


「大した話ではないのだがな……ああ、そうだ」

「何か?」


 指紋認証のパネルに触れ扉を開けたフェーデの背に声をかけ、振り向かせる。


「スレイド君の調子はどうかね」


 昨日の天気予報でも尋ねるような調子で、ファイドは尋ねる。


「目的を果たせない苛立ちから精神の不安定さが目立っています。その一方で、蒼穹の性能は十二分に引き出されているようです」

「ならばそのままでいい。適当にケアしておく」

「かしこまりました」


 孤独の中で憎悪を渦巻かせ、思い込みを凝り固めて放出させる。

 マルグリットよりはましな傷を残してくれるだろう。

 何か間違えたとしても、容易く処理できる。


 フェーデの去った部屋で、何にというわけでもなく嘲るように鼻で小さく笑う。




「――私だ。進捗はどうかね、シアス(・・・)




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