第23話「明かされゆくもの」:A1
「素晴らしい発明だ」
わずかに開いた扉から聞こえてきた声は、知らない誰かのものだった。
めったに人を寄せ付けない父に向かって言っていたから、おそらく彼は親しい者だろう。
しかし父は難しい顔をしていて、彼の言葉に同調しようとはしていなかった。
「なぜ不服そうなのだ? これはこの星の未来を変える力を持っている」
「……極端すぎるからだ。誤った使い方をすれば、それは滅びの道にもなる」
「誤らなければいいだけのことだ。お前は少し慎重すぎるきらいがある」
彼と父が何を設計したのかは分からないが、ともかく重大なモノだということは、幼い自分でもわかっていた。
自分たちの置かれている状況を、曖昧ながらも理解していたために。
「倫理を破壊し、炉を蝕み、退化の末に自滅する可能性を、私に背負えと」
「背負わなくていい……残るのはより良い未来。お前がアクシアとエルミラだけでなく、皆と幸せに暮らせる未来だ」
苦悩する父を諭す彼は、今思えば詐欺師のようにも見える。
なぜなら結果として残った未来というのは。
父の憂慮した、滅びへの道だったからだ。
――間もなくして、世界が火に満ちた。




