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気付けば師匠になっていた話


「師匠、お洗濯終わりました!」

「ご苦労様、レイシィ」


 俺の趣味、もとい祠に飾ってある聖剣の担い手を求めるために、優秀な人材を探し始めてから3ヶ月。

つまりは悪漢に攫われていた猫耳少女を拾ってから3ヶ月が経った。


 当初ガリガリだった彼女は、健康な食生活と適度な運動の下、最初見た時とは比べ物にならないくらいに健康的で、可愛らしい女の子に成長している。


 最初は手掴みで食べていた食事も、最近ではナイフやフォークを使うようになってきた。

これらも全て、俺の教育の賜物である。


 ちなみに師匠というのは俺の事だ。


 拾った時は様付けで呼ばれていたのだが、こちらの都合で、選ばれし者とかいう勝手なイベントに巻き込んでいる上に、色々と隠し事も多い身であるため、どうにもそういった敬称で呼ばれるのがむず痒かった。

そこで俺は彼女に剣の稽古をつけるという理由付けを元に、師匠と呼ばせることにしたのだ。


 まあ目ぼしい人材がこの3ヶ月で見つからなかった以上、彼女が俺お手製の聖剣を引っこ抜くのは予定調和といったところなので、修行をつける事自体は何の問題もない。


 むしろ問題なのはこちらの方で、そもそも俺が人に教えるだけの剣術や体術を身につけているかという疑問に達すると思うのだが、実はそちらも問題はない。


 伊達に1000年間も生きてはいないというか、なんというか、一時期の間ギルドホールで生産した武器やアイテムを魔物相手に散々試した話をしたと思うのだが、その無双していた数百年間がきっかけで一通りの武器防具は使いこなせるようになっているのだ。


 人間相手に試した事はないからなんとも言えないが、剣の技術だけでもそこらの傭兵や兵士に負ける事はないくらいには強いだろう。

もちろん、レベル105から生まれる筋力を抜きにした計算である。


 なにせ、人材探しを目的として、この三か月は散々旅人達の戦いを見学してきたのだ。

一般的に戦闘を生業としている者達の力量がどれくらいかなど、手に取るようにわかるというものだ。


 故に、俺は人に剣を教えるくらいなら造作もないくらいの技術力がある。

おそらく達人級といっていいだろう。


「師匠、今日も稽古をお願いします!」

「ああ、良いよ。まずはいつも通り、腕立て腹筋スクワット千回。それが終わったら素振り千回。最後に俺との模擬戦といこうか」

「はい!」


 結構無茶苦茶なトレーニングを課していると思うのだが、レイシィはキラキラとした眼差しで俺の事を見つめてくる。


 まあこの世界の人間には魔力という未知の力を使った身体強化術があるので、地球圏の人類と比べてはいけない。

俺に師事して3ヶ月の彼女ですら、今なら身体強化込みで岩を殴れば拳の跡がつくくらいには強靭なのである。


 いったいあの細い体のどこにそんなパワーがあるのか甚だ疑問だが、まあ俺だって人の事は言えないので、そういうもんだと納得するしかないだろう。


 余談だが、俺はまだ彼女の前で不老の最高位魔導士としての力を振るった事はない。

教えているのは主に剣術や体術ばかりで、魔法に関しては全く知らぬ存ぜぬで通している。


 なにせ、俺の魔法はこの世界の物とは明らかにかけ離れていて、完全にオーバーテクノロジーの産物であるからだ。


 俺も詳しい事は分からないが、レイシィに聞いたところによると、この世界の魔法は身体強化を含め、魔力を通してあらゆる事象を引き起こすことができるのだという。


 魔力が尽きるまで火を起こす事もできるし、水を出す事も出来る、といった具合に。


 しかし俺の持つキャラクターの魔法、いや魔導は、そういったものではない。

いわゆるゲーム的なスキルコマンドとしての縛りがあり、クールタイムやチャージタイムが必要な代わりに、魔力切れという現象を起こさないのだ。


 故に、この世界の魔力とはまた違った法則で動いているらしい事がわかる。


 また、それとは別に俺にははっきりと分かるくらい魔力が無い。

だって俺、いくら特訓しても身体強化とかできないしね。


 まあ、身体強化しなくても岩くらいなら拳で爆砕できるけど。


 という訳で、一般的に知られている魔法と、俺の魔導は別物と考えるべきというスタンスが確立された。


 レイシィは魔力の無い俺に対し、魔力コントロールが完璧すぎて、外に魔力が漏れていないからだという結論に達しているらしいのだけどね。


 不思議エネルギーをコントロールなんてした事ないので、そんな訳はないが。


 という訳で、現在の趣味は猫耳少女レイシィの特訓が主となり、毎日それなりに充実した日々を過ごしているのであった。


「ふっ、ふっ、はっ、ふっ……!」

「うーん、その感じだとレベル5、くらいかなあ……」

「何か言いましたか、師匠?」

「ああいや、なんでもない。続けてくれ」


 彼女の素振りに使っている木剣なのだが、実は装備レベルが戦士職でいうところのレベル5から、魔法職でいうところのレベル10から装備可能な、ギルドホールから取り出した訓練用木剣なのだ。


 もちろんこの世界の住人に明確なレベルなんてものは存在しないのだが、ここ最近でかなり握り方や剣の振り方が様になってきているので、ようやく装備できる力量に達したという事なのだろう。


 レイシィは身体強化以外の魔法が使えたりとかいうのは未だ無いので、階級的には戦士職で間違いない。

であるならば、そういう事なのだ。


 しかしそうか、レベル5かぁ。

なら、そろそろ次のイベントを挟むべきかもしれない。


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