第一王子の過去の話(レイナール視点)
モチベーションが回復したので更新再開します(`・ω・́)ゝビシッ
~あらすじ~
悪魔に願いを叶えてもらったら異世界に飛ばされた!騙された!
と思ってたら1000年経ってなんだか色々満喫してました、でも最近かなり暇。
暇だから聖剣とか作って内職してたら、気づいたら猫耳少女保護してた、解せない。
うわ、気軽に修行つけたらこの猫耳めっちゃ強くなった……。
かくかくしかじか色んなイベントがありつつも、せっかくだから聖剣持った弟子(猫耳)と魔王(架空の人物)を倒す旅に出よう!
愉快な仲間、魔王に呪われた(課金装備を与えた)盗賊少女リーズが加入。
ゴドル王国の第一王子とか色々助けながら、王都までやって来たゾ!←イマココ
王都の街並みを猫勇者レイシィと盗賊少女リーズと満喫した後、俺は個人的にやる事があるために一旦別行動となった。
宿は取ったし、お小遣いも渡しているのでレイシィ達の方は心配もいらないだろう。
ちなみにゴドル王国の第一王子、レイナール・ゴドルさんは俺と一緒だ。
既に彼に追手が掛かっていたところを見ると正体は割れていそうだし、一人にしたらまず暗殺されるからね。
致し方ない処置といったところだろうか。
◇
私はレイナール・ゴドル、このゴドル王国の第一王子だ。
現在私はB級冒険者の姿に身をやつし、ラグナの町から王都ヨンドルまでの護衛依頼で知り合った男に命を預けている。
大国の第一王子が何を突然知り合った人間に不用心なと思われるかもしれないが、これには深い事情があり、既に私には権力など無い事を先に弁明しておこう。
というのも、多少腕に覚えがあるとはいえ私が護衛も連れずに冒険者に扮しているのが何よりの証だ。
第一王子の肩書など既に王宮内では何の役にも立たず、第二王子である弟のレザード・ゴドルに全てを奪われた後なのだから。
「だが、それでも私はこの国の王子。国と弟を誑かすあの悪魔を退けるために、どうしてじっとしていられようか……」
「む?」
「ああ、いや。突然失礼した、忘れてくれ」
気が立っているせいか、護衛を引き受けてくれた男であるアース・ガルディア殿の隣でふとそんな事を呟いてしまう。
いかんな、こんな調子ではあの悪魔どころか弟にすら後れを取ってしまう。
気を引き締めねば。
しかしそれにしてもこのアースという男、一見すると冴えないF級冒険者にしか見えない頼りない風貌だが、まさかあれ程の実力者だとは思ってもいなかった。
王宮に巣食う悪魔の真実を知り追放された私の追手、恐らく私では太刀打ちの出来ない暗殺者達をまとめて相手にするレイシィ嬢やリーズ嬢の師匠だというのだから、それがどれほど規格外の者なのかは想像に難くない。
私は本当に運が良い。
いや、不幸中の幸いというべきか。
彼ほどの実力者がこちらの味方についてくれるならば、あるいはと思わざるを得ない、そんな不思議な雰囲気を身に纏う御仁だ。
そんな事を考えながら歩いているとふと、彼は立ち止まる。
「そういえば」
「む、どうしたんだいアース殿」
「レイナール殿は魔王についてどこまで知っておいでで?」
魔王、か……。
悔しい事だが、私が権威を失墜させ天才である弟を誑かした事で、手に負えない化け物となったあの悪魔の事を実は良く知らない。
歴史を紐解けばその戦闘力の高さや、人間を魔族に変える悍ましい魔法を使用するという情報はいくらでも手に入るのだが、そんな事はおとぎ話を知る子供であれば誰でも認識しているような一般常識だ。
故にこちらも対策の取りようが無かった。
「申し訳ないのですが、詳しい事は私も掴めていないのです。だが既に王宮内の王と貴族は奴の力によって魔族に変えられるか、大半が人質として囚われていると聞く。そうでない者も気づいていないだけでいずれはそうなるでしょう。これは私を王宮から逃がしてくれた忠臣が調べた信の置ける情報です、まず間違いはないでしょう」
「ふーむ……」
思い出すだけでも血が沸き立つ、私が逃亡する事となった最後の夜。
弟に城を掌握され権威の全てを失い絶体絶命の窮地に立たされていた私の下へ、唯一駆けつけてくれた忠臣と、あの勇気ある青年は今も無事だろうか……。
いや、きっと無事なはずだ。
彼らがそう簡単に死ぬとは思えない。
片や王国最強の英雄とまで謳われた騎士団長と、その騎士団長に認められる程の武勇に天才的な発想力、そして不思議な知識を持つ黒髪の青年が敗北する姿など、私には想像できないのだ。
だが相手はあの弟と魔王だ、そうとは思いつつも悠長にはしていられないだろう。
幸い王都ヨンドルはいつものように平和だし、彼らが追い詰められる程に切迫した状況ではないようだ。
恐らくまだ表沙汰になるには早いと踏んで、城でコソコソと準備を進めているに違いない。
権謀術数の得意な我が弟の考えそうな手だ。
そして私がそこまで考えていると、彼は一息ついた。
「と、なると……」
「何か思い当たる節でも?」
「そうですね。今のお話、辻褄合わせとしては中々に及第点なのですが、いかんせん芸がない。私なら既にもう一手打ちたい所です。────例えばそう、この国におけるもう一つの権力組織、聖なる者達を匿う教会の掌握とかね」
「なっ!?」
彼がその言葉を発した瞬間、私の脳裏には最悪の未来が横切った。
まさか、あの悪魔がここで大人しくしていたのは、王宮だけでなく教会にまで魔の手を忍び寄らせるためだったのか!
確かにそう考えるとに表沙汰にならぬよう、しばらくの間潜んでいる理由になる。
教会といえば国を跨いで存在する、国と比肩しても遜色のない権力を持つ巨大組織だ。
自称ではあるが、聖女や勇者と呼べる強大な力を持つ者達と聖騎士という独自の軍を内包している。
確かに目覚めたての魔王が対立するには、如何せん目障りな相手だろう。
「そうか……! くそ、この事にもう少し早く気づけていれば……!」
「…………」
言われるまで気づけない自分の愚かさが恨めしい。
しかしこの最悪の事態をいち早く想定したアース殿本人はと言うと、どこか遠くを見つめたまま何か考え事をしているようだ。
まさか、何か妙案でもあるというのだろうか?
不思議な雰囲気と落ち着きを持ったこの人の傍にいると、なぜだかまだ救いがあるような気がしてくる。
ことごとく行動が裏目に出ている私の考えることなどアテにはできないが、それでもこの御仁とあの奇跡の少女達が王都を救ってくれる事を信じずにはいられない。
◇
護衛するついでに、とりあえず魔王とかいう架空の存在に対してレイナールさんがどこまでこの設定を練り込んでいるのか聞いてみたが、結構真面目に楽しんでいるようだった。
これは嬉しい誤算だ。
いやね、俺としてもせっかく第一王子と第二王子まで魔王イベントっていう盛り上がるのあるお祭りに参加する訳だから、色々と探りを入れてみたかった訳ですよ。
そしたら案の定、王都ぐるみのビッグイベント。
こりゃあ俺も本気を出さなきゃなっていう訳で、せっかくだから王都の教会も巻き込んでみたらどうかなって提案したんだけど、レイナールさんの反応は予想の斜め上を行ってたね。
どうやらさすがの彼もそこまでは発想が至らなかったらしく、このアイディアにめちゃくちゃ悔しがっていた。
いやぁ、これは一本取りましたわ。
まぁ、という訳で猫勇者レイシィと盗賊少女リーズちゃん達の次のイベントは、教会もろとも巻き込むことに決まりました。
青春だなぁ!