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フレンドリストとかいう最恐システムの話


 レイトンさんや弟子たちとの相談を終え、とりあえず様子を見ようという事で野営は俺達最後尾組が担当する事となった。


 これで不審人物が動き出せばすぐに気配を察せるし、行動もとれる。


 だが正直、俺達が野営の当番を全面的に申し出た時点で、察しの良い奴なら警戒をしているのがバレバレだろう。

そういった意味では気配を察するためというより、「俺達はお前達に気付いているぞ」と敢えて警戒を示す事で、相手の愚行を封殺しているとっても過言ではない。


 しかしながら、俺としてはねこ勇者レイシィのイベント進行に邪魔になりそうなら早期に排除したいので、なるべく敵には行動を起こしてもらいたいのもまた本心だ。


 できる事ならば相手を泳がして情報を収集し、この騒動の原因となる存在を把握しておきたい。


 そういう訳で、実は第一王子の敵対勢力を封殺するのではなく、そうしていると見せかけて隙を晒し行動を起こさせるのが裏の目的だったりする。


 そのためにはまず王子を襲いやすい局面に誘導しなくてはならないので、俺はとある提案をした。

提案の内容はズバリ、野営中の警戒は王子と俺がセットで行うというものだ。


 この提案には二つの意味があり、一つ目は俺という最大戦力を王子につける事でレイシィ達を納得させるという事と、二つ目はたいして戦えそうにない俺という最弱戦力の認識を利用して王子の防御を手薄にするというのがある。


 ようするに今までのポンコツぶりを利用して、相手の油断を誘おうという作戦である。


 まさか敵さんも、たいした警戒を見せずに馬車で揺られていただけの俺が、王子の護衛を務めるなどとは思ってもいないだろう。

外見年齢的には弟子たちよりも高いとはいえ、演技でもあのポンコツぶりは本当に酷かった自覚がある。


 なにせ常に誰かとぺちゃくちゃ喋ってるし、寝転がりながら空なんか眺めていた訳だからね。

うん、絶対に舐められているな(確信)。


 という訳で、この作戦はかなり有効なのではないかと個人的には考えているのだ。

王子は自分で自分の身を守る事が出来ると考えているのか、俺にはあまり期待せずに快く了承してくれた事も大きい。


 相手もそれなりに王子の実力を把握しているだろうし、俺なんか眼中にもないだろう。





 ──いざ野営が始まり、周りの者達が寝静まってから数刻の時が流れた。


 気配的にも相手が動き出すとしたら、そろそろだろう。


「あ、ちょっとトイレいってきますね」

「おいおい、アースは戦えないんだから気をつけろよ? なんなら俺がついていってやろうか?」

「ははは、遠慮しておきます。このくらいでビビってたら冒険者なんてできませんよ」


 口調を擬態であるC級冒険者のぞんざいな調子に戻したレイトンさんが気を遣ってくれるが、それではまずい。


 いくら俺がポンコツ野郎を演じているからといっても、さすがに野営の見張りが二人共持ち場を離れるとか怪しいどころの騒ぎじゃないからね。


 何か裏があると思われないように、俺は一人でこの場を離れていかなければならない。

そして何より、襲われている時に俺が一緒だとさすがに実力が割れてしまうし、泳がすために逃がした敵に警戒されてしまうから却下だ。


 そそくさと持ち場を離れた俺は物陰に潜み、敵襲を待つ。


「……お、きたきた」


 一人は俺とは別の位置の物陰から弓を構えて王子を狙い、他に集まった者達は彼を囲むように、尚且つ気づかれないようかなり遠くから様子を窺っている。


 行動を起こしたのやはり、【疾風の狼爪】の皆様だったようだ。


 しかし俺の【エネミーサーチ】はキロ単位で察知可能なので既にバレバレだが、あいつらも中々練度が高いな。

冒険者としての技能や近接戦闘能力にはあまり期待できないのだが、襲撃を掛けるという意味ではかなり連携が取れている。


 もしかしたらそういった方面のプロなのかもしれない。


 するとここで狙い打てると確信した弓兵が弦を引き、ついに矢を放った。

だがその行動は俺からしたら、まだまだ甘すぎるといっても過言ではない。


 なぜ襲撃を警戒した王子がなんの策も無しに無防備でいると思うのだろうか。

王子とて遠距離から弓で狙われる事くらい想定しているだろうし、そのための対策を取っていない訳がない。


 辛うじて全身鎧を貫ける程度の攻撃力はあるみたいだが、王子の鎧には通用しないだろう。

彼が装備している黒鉄の鎧は材質からして特注だし、こんな事態も想定してからか、鎧そのものの効果により防御魔法が既にかけられているのだ。


 俺は魔法について詳しくは分からないが、なんか僅かでも魔力を流していると鎧に結界が張られるとかなんとか。

まあ、なんかバリアーが存在していると思っておけばいいだろう。


 俺もよくわからん。


「とはいえ、わざわざ撃たれてやる必要もない訳で……、はい石礫。迎撃完了。おお、驚いてる驚いてる」


 俺の指弾により弾かれた矢が根元からポキリと折れて地面に転がる。

何が起こったか分からずに驚愕に目が見開かれた弓兵もそうだが、なにより弓兵が狙いを外したと思った疾風の皆さんの驚きようは大きい。


 よほどあの弓兵に信頼を置いていたのだろう、失敗してしまい可哀そうなことだ。


 その後、苦し紛れに四方八方から疾風の剣士達が王子を襲撃するが、実力的には放置しておいても問題はないだろうと判断する。


 それよりも問題は任務が失敗したとたん逃げ出した弓兵を追う事だが、ある意味俺はこれを待っていた。


「ほい、フレンドリストに登録」


 プレイヤー機能であるフレンドリストに登録し、謎の弓兵さんをマーキングする事に成功した。

ちなみにこのフレンドリストだが、相手が了承しなくても勝手に自動登録され、相手の名前と位置情報が常に表示されるようになるというストーカーご用達の最恐機能だ。


 ゲーム時代ではそんなに凄いといった感じはしなかったのだけど、現実世界で実際に使うととんでもない効果になるな。


 俺はしみじみとそう思うのであった。



ちなみにゲームにはブラックリストもあります。

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