表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/69

悪魔の登場




「指が足りないよ」悪魔タタンが言った

廃棄物がゼリー状だ

少年がビニールで翼を作る

ネズミが犬の死骸を手分けして運んでいた

日陰で性交している子供達のおやつがすり潰した芋だった

「それはきっと数え方がおかしいんだ」悪魔レキュスタが言った

母乳の少女が生家の向かいに売られる

老婆が配るお菓子が薬入りであることを誰も知らない

「Zzz……。Zzz……」寝ることが好きな悪魔ズィーグァンもいた

「今日もどこかに強いやつはいないかなぁ!」戦うことが好きな悪魔ギャニットが言った

「モグモグ、モグモグ」食べることが好きな悪魔エドウィンが蒸し菓子を食べていた




太っちょ鳩が陽気に踊る

棺桶の中に死体と一緒に雑草を入れる

時計が耐えきれず一つ残らず狂ってしまった

永遠が種子に宿っていることを人間だけが知らない

彼方の海が赤く燃える

空は死者がぶら下がるためにあるのだ

「ところで今日はなにして遊ぼうか」悪魔タタンは遊ぶことが好きだった

「じゃあ、ババ抜きしよう」

「いいよ」

「でも、トランプが無いからできないや」

イナゴの大群が草むらに潜んでいた

「誰が良い子は見つけられた?」悪魔レキュスタが言った

「ココっていう女の子がいるんだ」悪魔タタンが言った

「その子はどんな子?」悪魔レキュスタが言った

クラゲが砂浜に打ち上げられた

家族連れが物珍しげに見ていた

バイクに乗った青年が煙草をふかしていた

行く先は気まぐれだ

豚が大麻を探す

鳥が貝殻を咥えて水平線を見る

ここはどこでもない場所だ

影に母親がいないように

未来か独り歩きなどしないように

闇夜に浮かぶが

クラゲと貝の目玉が悪魔と赤血球の堺と文字だ

耳を傾けると思い出が流れ出てしまうから慎重に彼女にキスしなければならない

「ココはとっても良い子だよ。これから皆で会いに行こう」




悪魔達が丸まって

影が広がる

空が引っ張られて

海がビー玉になった

悪魔タタンを先頭にココの元へ走った




足のないココが動けなかった

熱気と塵と皮脂で髪が固まって

おやじが血に飢えて大麻を食べた

娼婦が破れたワンピースでおりものを拭いた

道端で卒倒する人の眼球が速い反復運動をしていた

鉄の骨格を持った人混みと日射が冷笑され

空を知っているのが地をつつき回すニワトリよ

ココが買い主のために薬を盛られる

グラスにはカスがこびり付いていた

安価な大麻煙草を売るのが初潮の少女だった

割れたポリバケツと箒を雇われの肥満女が持ってきていた

ココが格子窓を見て眩しい

枠の中に鳥と電話と二十年前の看板がある

水道管から決まった時間に水が流れてゆく音がする

リンゴが監視にくるギャングに食べれている

ヒマを持て余したギャングがポーカーで湧く

酒瓶は精神浮遊を抑制するためにあるのだ

今日一番勝った男は脂ぎった顔だった

「今日、血走った目の老婆を見たよ」

「どこで?」

「あのイカれおやじの酒屋の前だけど、きっともういないよ」

一仕事終えたギャング達が来た

「よう、今誰が勝ってるんだ?」リボルバーを遊ばせたギャングが言った

「珍しい魚の売買をしてんだ」金儲けの上手なギャングが言った

「このガラス細工を娘に買ってききたんだ」子煩悩なギャングが言った

机の上に札束を広げていた

痩せた子供達がギャング達を覗き見ていた

外でバイクを磨いていたギャングが銃を放った

これがギャングの日常だ

子供達が大麻煙草を盗る

ココが外の景色を見る

そこは何でもない場所だ




悪魔に父親はいない彼らが駆ける先に過去はない空を滑空する壊れたフィラメントの街灯が悪魔の憩いと監視と接吻の場だ空を駆けると思い出をすべて投げ出してしまうから絶対に後ろを向いてはいけない「もうすぐ、ココのいる場所だよ。女の子だから怖がらせちゃダメだよ」町が凝縮して道路が裏返って家々がはちきれて街灯がせり出てきた悪魔達がココを見られる看板の上に舞い降りた


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ