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ココの足が切られた





床に散らばった割れたタイルを踏むと熱い

鉄格子の窓の向こうが世界だ

道路に撒かれた車油が気化している

大きなタイヤの轍が伝えた

石と薬を詰められ眩しい

「おまえはこれから詩女として足を切られ、歌を覚えて売るんだ。変な気を起こすんじゃないぞ」貧相なギャングが言った

ココの縛られた足のうっ血が美しい

手も縛られた

ココが感覚の無くなっていく足を見た

蝶々の行く先がわからないのは触覚を切られたからだ

魚が水面で遊ぶあめんぼを取り逃がした

ギャングが強い陽射しの下で銃に油をさしていた

車のバンパーに油とほこりが混ざって固まったのだ

貧相なギャングが階段を下りる足音をさせて

ココがなにも聞かない

街頭スピーカーが流す誰も知らない異国の歌

今日も子供達が足裏を使ってがれきの中を弄っていた

消沈したココがよだれを垂らす

ココが生を自覚した

空タイヤに土が詰まっている

明日もまたこの床を見ることがココを怯えさせたのよ

太った男がにわとりの足を揚げたのを売っていた

きっと三個しか売れない

ココが思い切り仰け反った

いかような場所でも愛は囁かれるのだ

廃墟でひよこが売り主を求めて辺りを見回した

花はかようにも人を貧しくさせる

ココの足からしびれがとれていった

ギャングがココの様子を覗きに来た

食べていたウェハースの粉が点々と散っていた

車が熱を帯びて車庫が意をなさない

ココの家族を殺した小銃の弾倉はどこかにいった

ポストは町の治安の悪化と共に取り払われたのだ

誰かが熱を帯びた車に小便をかけていた

「私は、これから、どうなるの?」ココが言った

「おまえは、知らなくていい」ギャングが言った

壁の向こうにココの透かして見ることはない翼があった

童話が無くなったからだ

幼児が腹を空かせて炙った虫を食べている

少年が銃を片手に煮出した大麻を染み込ませた綿を口に入れる

雑草が錆びた水道管のわきに繁っている

悪魔が枯れた噴水で寝転んでいる

教師が浮浪者にパンを与え諭している

ギャングがほったての教会で麻薬売買を話している

アロハシャツが大量生産の輸入品である

携帯電話がPCで株売買をする男とつながっている

ペニスが少女の腹から出て飛行機に乗って故郷に帰る




ギリギリギリギリ

ココが足を切られた

悪魔に泣きも笑も無くただただ見られる

昔建てられた図書館から本が盗まれる

トイレに詰まったのが犬の骨だ

子供達が汚水を飲んで胃に穴を穿けた

畑の果実を収穫できるのが一ヶ月先のことだ

ギリギリギリギリ

ココが足の行方など知らない

無闇に痛がっても何も変わりはしない

タイルをしゃぶっていたせいで口の中傷だらけ

ココがココのものであると識るために

今のココが童話では足りない

大工がノコギリで木を切る

ギリギリギリギリ

羊が尻を金なし男に噛まれた

詩女が詩を唄う乞食か

夜に雇い主と寝る

父に捨てられたのが十年前のことだ

足のない感覚にもう慣れた

大きな手がココの腰あたりを摩る

甲羅を赤と黄と緑に塗って売った

ギリギリギリギリ

くまの子が廊下の向こうで踊っている

ココにはわからない翼をもがれた白鳥

りんごの木は根っこから引き抜かれてしまった

燃料にしかならないペーパーバック

大海のぬし大タコが車に轢かれた

ギリギリギリギリ

ココが切れた足を見る

鳥に啄ばまれたのがスナック菓子だ

ギャングが詩女をだれに売るか話している

食事が一日三回ある

塗られた消毒液と包帯がしみる

ホタルがフィラメントの代わりになってココを永久に照らしてくれる

「やぁ、ココちゃん、元気だして。大丈夫よ、きっと!」ホタルが言う

クジャクが三毛猫を乗せて飛んで来る

ギリギリギリギリ

ココが熱を出したのが足を切られてから10日後のことだ

ずっとくまの子と野原にいた

歩く気力などない

嗅いだことのないツンとした臭いがした

病気だった

ギリギリギリギリ

週に一度ギャングが様子を見に来た

空が海のように広く思えた

良くなると退院した

ギリギリギリギリ

車椅子に乗る時看護師の女がギャングとキスしていた

車のトランクにしがみついて引き摺られるのが誰だ

ギリギリギリギリ

暗い部屋に戻されたこちらの方がいい

子供達が盗った紙幣を詰め込んでいた

青年が違法改造したバイクで旅行者を6人ほど轢き殺した

ギリギリギリギリ

白い罪人がココの前に買主を連れて現れたギリギリ






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