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悪魔とハンターが祭りに入る



「お祭りなんだからもっと楽しいことしようよ!」悪魔タタンが言った

「でも、一体何をするっていうんだ?」悪魔レキュスタが言った

「おう! こうゆう時はケンカだ! ケンカ!」悪魔ギャニットが言った

「みんなでもっと美味しいものを食べよう!」悪魔エドウィンが言った

「Zzz……お昼寝……」悪魔ズィーグァンが言った

「じゃあそうだ! みんなでお面をつけて追いかけっこするってのはどう?僕達とハンターみたいにさ!」悪魔タタンが言った

「なんだそれ? 一体何するっていうだ?」悪魔レキュスタが言った

「だから追いかけっこだよ! お祭りの日はみんなが僕達悪魔やハンターになって僕達のやっていることをやってもらう日にするんだ! そうすればきっと楽しいよ」悪魔タタンが言った

悪魔達が跳び上がって屋根の上を移動した

駆けていくネズミと悪魔達の背中がこの町の人々を楽しげに抱えるのだ

もう魂はどこにある?

どこにもないのだ!

悪魔タタンがハンターを見つけて駈け寄っていった

「ねえ、ハンターさん! 僕達でもっとお祭りを盛り上げようよ!」悪魔タタンが言った

「そいつはいいな! で、何をやるんだい?」ハンターが言った

「この町のみんなにお面をつけてもらって僕達悪魔とハンターさんの追いかけっこをみんなにやってもらうのさ! そしたらみんな、この町がもっと好きになるよ!」悪魔タタンが言った

象の背中の上にこの町を乗せて輝く星の数が国のために散っていった国士達の血

夢を見る少女の背中に羽が生えたよ

それはなんて素晴らしい!

滝のように人が流れる流れる流れるとでも小さな夢を見ていたよう

そのガラス瓶には三人しか入らないの

ハンターが跳び上がって悪魔達についていく

「ねえ! 僕はきっとこの世界を夢みたいにしたいんだよ!」悪魔タタンが言った

「そんな夢の世界では死はどうなってしまうんだい?」ハンターが言った

「死はきっとちっとも怖いものではないよ。黒くて温かくてゼリー状の全身を包んでしまうものさ。だから僕達は毎日生きて死者と交信しなければならない」悪魔タタンが言った



「ほら、あそこだ! あそこの教会の鐘!」悪魔タタンが言った

行き先を知らぬ鳥が誰彼構わず人の爪を剥いでいく

酒に酔った男達のビール瓶乱闘で破片が飛ぶ

見下ろす人の声を聞け

死体の肉を食らうのが虫と微生物だ

儀式とは我々が世界と対峙する時に己を守る物語である

でもそれがなんだっていうんだと誰彼が言う

それは違う今まさに我々が生きているこの宇宙そのものがいつか消えゆく物語である

どこにも境界なんてない

感性の拡張

カットアップした歴史を万華鏡で見てみないかい

そこには血がある

時間をすいていく悪魔の肋骨が歴史を楽しげに運んでいくのだ

「魂はここにある! 見えなくなって、ここにある」悪魔タタンが言った

悪魔達とハンターが教会の鐘の横に並んだ

「よし! ハンターさん! 僕達で鐘を鳴らしてお祭りを盛り上げよう!」悪魔タタンが言った

「よし! じゃあいくぞ! せーのっ!」ハンターが言った



教会の鐘の音を聞いた町中の人々が思い立って家に戻って自分の思い思いの悪魔とハンターのお面を作った

牛の背中に乗った子供達が悪魔のお面つけながらへんな踊りをする

ハンターのお面をつけた酒屋の女主人が鉄鍋叩きながら往来を闊歩する

悪魔のお面をつけた麻薬中毒者が水を得た魚のように動き回る

ビール缶にはハンターのお面厳禁悪魔のお面歓迎と書いてある

ハンターのお面が屋根に上って叫ぶ

陽が落ち始めるといたるところでちらちらと篝火が灯り群がる

悪魔のお面をつければもう死者か生者かなんて関係ない

夜になって祭りに疲れた人々が家へと帰っていく

こうして祭りは生まれてそして死んでまた生きられる

だから我々は毎日生きて死者と生者が同じレベルでスパークする

この祭りを大事にせねばならない




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