ココが死んだ
町が色めき立ってくる
生の虹というものがあるのならこの町が死の螺旋階段で死の最果て言葉につながっているといえる
ココが河原の一本の木の下に着いた
こちら側は町の人々が休み向こう側では人々は楽しげであろう
たくさんの案山子が一列に置かれて同じ方を向いている
臨月の妊婦が少女に連れられて往来の露店を回っている
くるくると回るカラフルな子守りのおもちゃの音に寄ってきたのがネズミだ
子供の指の城の残像を見るであろう
人の間をぬって走るリトルギャングが盗みをしようとする
人人人人人人人人人人人人
三輪自動車タクシーが定員オーバー客乗せして発進しようとしたらこけた
十字路の電柱の上から亡霊達が下の喧騒を観察して絵を描いていた
悪魔タタンが子供達とおもちゃのピストルを使って広場で踊って遊んだ
悪魔レキュスタが処刑人の手下とギャング達の下世話な話を酒場で聞いていた
悪魔ギャニットが旅の格闘家とゴミ山で決闘した
悪魔エドウィンがしゃがみこんで道端で食べ物をめぐんでもらっていた
悪魔ズィーグァンが処刑人の屋敷の高級なベッドで寝ていた
ハンターが諍いが起きないよう町中を見回っていた
泥がついて固まったトタン壁が死者の手形いっぱいついて花畑みたいだ
みんな同じ方を向くことだけが世界の在り方じゃない
子供が町外れの林で愛撫し合うカップルの横で大便した
棺の中に豚とかニワトリとかの骨を混ぜてもきっと誰も気づかない
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人の血とは本当は無色透明なものである
便意を抑えられなくなった人々が排水路で用をたす
目に見えぬものだけが世界の有無に関わっているのではない
町のどこかで子供達が菓子を持って踊っているのだ
ココが木を見上げる
木の葉をよく見てみると小さな虫がついていて自然のダイヤモンドといわれる巣に分泌液をまぶしたものを実は神への献上品として大事に隠している最中なのだ
ココがあの足を切られた病院のことを思い出した
あそこは消毒液とカビの臭いがしたがこちらは針金を肉に突き刺した時の臭いがした
死を悟った羽虫が宇宙を目指し今生を尽くして翔んでいる
くまの子がいつの間にか母親になりまた小さいくまの子を抱えて散歩している
教会の鐘の正午を知らせる音に寄ってきたのが大麻を受粉させるためにもらってきた大麻の雄株だ
町は生き物であろうがなかろうが生き続け動くだろう
時間のすき間を器用にくぐり抜ける鳥がエサを探している
意味意味意味意味意味意味意味意味意味意味意味意味
ココ前のめりに倒れたら荷車が動き出した
十字路の電柱の上から亡霊達が転がっていくココの荷車をしっかと見ていた
ギャングが路肩でロシアンルーレットをして遊んでいた
酒場の女主人が男二人からの求愛を聞き流していた
昔車で頭を轢き潰された男がめぐりめぐってゴミ山に来た
金なし三姉妹が納屋に居座り続けていた
浮浪者が右手を出しながら弾丸の物乞いをした
警察官がお気に入りの売春婦に誘われ家に入って行った
往来をココ駆けていくことによって電柱が子守歌みたいに柔らかだ
みんな同じ方を向くことだけが世界のあり方じゃない
子供がサッカーボールを頭に乗せながら将来のことを考えた
整列して歌う大人達によって誰も明日のことをナイフで削がない
ココが死んでいた
ココがもう動かなかった
ココの死体がゆっくりと進んでいくだけだった
ココの顔が微笑んでいるようだ
ココが川の方へゆっくりと進んでゆきココの体がどんどん砂だらけになって口の中にも砂が入っても往来の人々も気にかけず祭りを楽しんだ
そしてココが川に落ちた
ココの死体もうどこからも上がってこない
祭りで火照った男達が川で水浴びをする
目に見えぬものだけが世界の有無に関わっているのではない




