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祭りが始まる



少女が母親と一緒に精一杯のおめかしをした

赤い色をした玉虫を子供達が宙に投げる

夜明けの空にエスカルゴの殻を投げてみよう

ココがゴザの上で目を覚ました

木の上には鳥達がたくさん休んでいた

見つけられないものを探すことを生業とする男の顔がペイントされていてわかりづらい

屋台が日がのぼる前から開店の準備をしていた

銃屋が店の奥に輸入物の最高値の銃を隠している

少女の弟の気狂いの日々を記録した癩狂人日記がある

地獄に底があるのは踏ん張って上の使用人を引きずり落とすためだ

落ちぶれてアル中になったギャングがこの世に生きるすべてのものに許されない

なら死んでしまえ

オナニーをする少年が世界からの救済を望む

俺は経血を食べる

今夜の夢の内容を考える少女の腕に痣ができた



往来が人でにぎわっている

人々の歓喜の声が聞こえるもう何も見えない何も見えない

女神様僕を見てください女神様

そうすればこんな僕でも生きていて良かったって思えるから

私を見なさい! 私を見なさい! 手が空いている人がいるなら私を見なさい!

俺は俺は

僕は

私は

ぼくはぼくは

わたちは

私に私に

儂に儂に

俺に俺に

僕に僕に

私を私を

愛してください

ココがにぎわう往来を見て回った

人々の足音の独特のリズムによって川の流れの音がいつもより大きくなる

家が小刻みに震える

あなたは何を求めるというの?

歴史も世界も地球も宇宙を全部全部カットアップしてしまえ!

そしてそこに残るのはあなた一人孤独なあなた一人

それでも寂しいとは言わないでこの町ではいつも宴が開かれているのだから



人々が歓声を上げる

祭りだ祭りだ殺しだ祭りだ祭りだ祭りだ

みな父母であり兄弟姉妹であり友人であり生者であり死者であり鳥であり虫であり動物であり青い炎であり赤い地であり悪魔でありハンターであり子供の指の城であり

つまりなんでもないあなた自身だということだ

ココが往来の人々の足の間に何を見たかわからなかった

でもそこに生らしきものと死らしきものがあったのはまぎれもない事実だ



ココが人でごった返す往来を進んだ

すべての自意識は存在の滝つぼに落ちて凄まじいパワーになる

縄でつながれた七羽の鳥はどこへ飛ぶ

町中のポスターが呪術的位置関係だった

木の下でカップル達が抱き合いキスしていた

顔にペイントした子供達が大人の尻を叩いて怨念を払い出そうとする

ココが夢を見ることを忘れて河原の方へ進み始めた

腹の中にある父カルトン母ポメラのことを急にココが思い出す

死んだ父カルトン母ポメラはどこへ行った

ココがどこを見て話出せばいいのかわからない

ならココ開かない目で見る

見えずともきっと手を引いてくれる者がいる

ココは前知らず進む

今が夢か現実かを記録するものなんてなにもなかった

ココが父カルトン母ポメラにありがとうございますと言う

人々の歓喜の声がそれかき消す

もう何も見えない何も見えない

父さん母さん私を導いてください

父さん母さんそうすれば私の最後はきっと良いものになるから

私を見て!

私を見て!

抱きしめなくっていいから私を見て!

私って私って私って私って私って私って私って私って私って私って私って私って私って私って私って私って私って私ってどんな子だった?

ココが友達の声を聞いた

一体なにをもって誰を友達と申告すればいいのか

ココがわからなくなる

木々が優しく笑う

私はなにを求めるというの?

ありがとねありがとねありがとねありがとねみんなみんなありがとうございますね

そうしてそこに残るのは無世界と一つになった

私という無それは儚くも悲しくもない

だってこの町では年に一度祭りが開かれるんだもの

ココが精一杯叫ぶ

祭りよ祭りよ私よ!

祭りよ祭りよ祭りよ祭りよ

私は父母になり兄弟姉妹になり友人になり生者になり死者になり鳥になり虫になり動物になり青い炎になり赤い地になり悪魔になりハンターになり子供の指の城になりつまりすべてである私だということだ

ココが往来の人々の足の間に見たものを言うことはないきっとそれは簡単に言葉で克明にしてはらならないのだ




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