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ハンターが来てココの家燃えた



ココの仲間達が祭りの準備を進めた

ハンターがココの家を訪ねてきた

「よおココ、また何か企んでいるのかい? 具合はどうだ? 果物を持ってきたよ」ハンターが言った

腐った花々の種子がダイヤモンドより貴重だ

それこそ生かされざる死体といえよう

トラックに掃除機の部品が積まれお情けで市場に出ていく

すべて無意味なものだとしたら人生のどれだけが有意味なものといえよう

屋根のヘリにぶら下がった子供の見上げる空が明るく寂しいものである寂しいものである

ほのかな肉の臭いをさせた人々が頬を撫でるひやかしと羽虫風だ

土を必死に食べる老婆の腹の中が何もない

青年が仕事をくれと言いながら麻薬を売り続ける

リトルギャングがガラス片を持って乳母の不倫相手を殺しに行く

「私はお祭りがしたいの。お祭りよ。町をすっぽり囲んでしまうような大きなお祭りにしたいわ」ココが言った

「でもそんなに大きな祭りだと処刑人達が黙っちゃいないぜ」ハンターが言った

「だから私はあなたに頼みごとがしたいの。あなたからかけあって処刑人達にお祭りを認めさせることはできないかしら」ココが言った

「別にそれはいいが、俺の言うことをなんでも鵜呑みにするようなやつらじゃない。その時はココにも来てもらうかもしれないが大丈夫なのかい?」ハンターが言った

「ええ、大丈夫よ。私は動けるわ。でも私は思うの。世の中で言葉で伝えられることなんて実はほんの一握りなんだって。だから私は言葉を使わずに身体で伝えることにするわ。悪魔みたいにね」ココが言った

今日の空はなんだか雲が多いと思ったら亡霊と鳥がサッカーした跡だった

畑で収穫作業するトラクターが外国で六回転売されてこの地にきた

墓前にいつもまんじゅうを供える少女が夢を語る姿を誰にも見せない

都市部の大学の教授が研究室の窓を全開にして死者の踊りを昼食前にする

意志を失って石像になった男が国の安寧秩序のために粉状にされるのだ



魂を失った人々を学者が許さなかった

家紋の一つ一つをリンゴ五個の値段で売らなかった

視覚障害者が野菜カゴを持ち映画の台詞真似する

仕事のない小説家が金持ちの秘書で留学しようと考える

ココがもうこの家を出て行こうと思った

土着宗教において悪魔をナメクジのようだと揶揄する男の方が正しい

ココが何の身支度もせず家を出た

すると家がグラグラ揺れ始めそして崩れた



その夜ココが壊れた家を燃料にしてたき火した

ココがなぜ家を燃やしたのか

ななめ上へと飛んでいくフクロウの爪が何を狙っていたのか

何もない草原でなぜ盗みが死刑に値するのか

くまの子はなぜ無性生殖で増えていくのか

街灯の下で少年達がなぜ麻薬を吸いながら身の上話をするのか

説教をする教師がなぜ単刀直入にこの世界の真実を言わないのか

外国から来た旅人がなぜ我々に酔狂な目と憐れみの目を向けるのか

なぜ政治は死より血を失いナイフのような言葉ではなく卵になったのか

それらはきっと悪魔みたいな鏡のなせる技だ

ココが思った

ココが家の前でたき火をしながら夜過ごしたら火の中に人の顔あった

ココが崩れてしまった家を見たが顔は無かった

ココが舞い上がる火の粉の向こう側の夜空に今何を思っているかを絶対に明かさない

ココが燃えて灰になっていく家だったものを前にして一人で歌う

ココが火の揺らめきの中に踊っている悪魔タタンや悪魔レキュスタ、悪魔ギャニット、悪魔エドウィン、悪魔ズィーグァンを見たような気がして微笑んだ




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