子供の指の城の崩壊
子供の指の城が崩壊した
一斉に壺の中を覗き込んだ
その手の傷がいつの間にか無くなっていた
そして外に出てみた
ギャング達が昼間っから賭け事していた
近づいていってアメを分けてもらった
そのすぐ横の家の排水路にニワトリが詰まっていた
引っ張り出すと一枚の紙幣を羽に隠していた
それを持って売春小屋に行ったら金取られて頭殴られた
それを見ていた肥満女が売春小屋にのしかかりして壊した
きっと売春婦の怨念だ
蝶々を追っかけて町はずれまで来た
そこには寂れた遺跡の教会があった
そこから五百年前の果物を盗む
吹抜けのところに鳥の羽根がびっしり付いていた
埃の臭いと一緒に熟成した血の臭いがした
部屋には錆び付いた拷問器具があった
一つはカラスとしゃくとり虫が祀られた海の部屋だった
一つは猿と仮面が祀られた岩の部屋だった
一つはカエルとウサギが祀られた森の部屋だった
一つはサチリアジスの頭部が祀られた荒野の部屋だった
一番奥の講堂には手をつないで空を飛んでいる多勢の子供達の絵があった
みんな狂気を孕んだ笑顔をしている
今はもう跡も無いが教会の周りには村があった
そこには大きな村でつまはじきにされた人々が作った
でも大きな村が攻め込んできて滅んだ
やつらは麻薬吸ったランチキ野郎だった
だからこっちも麻薬吸って対抗した
でも負けてしまった
これは作り物幻想妄想ではない人間の物語である
町に戻って来て公衆便所を一つ一つ覗いた
そこに死んでいった魂が雑草になっていた
両足の無い少女についていったらサチリアジスの頭部と一緒にいた
そこの壁を通り抜けて教会を目指し走る
それを見ていたニワトリが「珍しいなこんな時期にお盛んだね〜」と言う
蝶々が「この次もきっと良い世界に生まれるわ」と言う
ネコが「とりあえず俺ここまで来たけどこれからどうすればいい?」と言う
教会の前にとりあえず群衆の死体が置かれている
この町の麻薬がチャネリングを始めた
ココが町の浄化に負けた
子供達が一斉に壺の中を覗き込む
前足を切られた牛が半分死体の動きをした
ネズミが棺を食い破り出た
ココが昼間ハンターの家で文字の授業をした夜になると窓辺で歌った
農民の鍬が縄で動けないように括られていた
ギャングが内ポケットにイカサマ用のジョーカーのカードを持つ
町中の線香をへし折った子供が親に監禁されて殴られた
それを見ていたココがなんとも言えない気持ちになった
「私はあの場所に帰らなくては」ココが言った
ココが荷車に乗ってハンターの家を出た
屋根の吹き飛んだ家で男と女が静かにセックスしていた
水道業者がうわのそらで数字を呟いた
緩やかな坂道に洗濯物が干されていた
手を伸ばして洗濯物を取る土の臭いのする子供だ
夜中に蹴られた自販機が壊れる
ココが汚水の混じった生臭い川の前を通った
ココが企業が撤退して廃れたコンクリート工場の前を通った
ココが学校のためにさら地にされた広場の前を通った
ココがまだ死体と火薬の臭いが残る処刑人の屋敷の前を通った
「子供の指の城が無くなってしまっても、私達には子供の指の城が必要なのよ」ココが言った
みんな行き場を失って乾いた笑いをする
悪魔はもういないがみんな悪魔のような顔をしている
ここは資本経済に乗り遅れた者者の吹き溜まりだったでも新しい世界を作ろうとして失敗した腹の底ではあいつらのことおかしいって思ってたからだから俺達は葦みたいに戦ったでも負けてしまった
これは作り物幻想妄想ではない人間の物語である
業者が公衆便所をシャベルカーで壊していた
ココが道端の雑草に絡まった魂を見た
ネズミが路地を駆けて行くと屠殺場に出た
現地雇い労働者が町中に散らばる
どこかの肉親集いが大机を囲んで宴会をしている
少女が生まれ変わりを信じて熱心にお祈りしている
違法売買動物のブローカーが取り引き相手が来ずに戸惑っている
ココが元白い罪人のアジトだったココの家に着いた
「私はまたここから始めるわ」ココが言った




