長兄とリトルギャング
老婆が目の上にたんこぶのできたリトルギャングの落とした拳銃を拾って逃げた
長兄が下唇の割れたリトルギャングの頭に銃口を押し当てた
指の太いリトルギャングと目の上にたんこぶのできたリトルギャングの手当てをしようと太った女が救急箱を抱えて出てきた
「おいそこのアマ! 手出すんじゃねえ!」長兄が言った
みんな酔狂な目で見る
殺しだぞ殺しだぞ
子供がポケットに入っていた炒った麦を食べた
「おいお前、俺の妹に何したんだよ。何しようとしたんだよ。言ってみろよおら」長兄が言った
ココが息をのんだ
「おばさん! そこの人達を手当てしてあげて! 兄さん! 私は大丈夫なのよ!」ココが言った
「うるせえ! お前は黙ってろ! おいアマ手出すなよ撃つぞ」長兄が言った
指の太いリトルギャングと目の上にたんこぶのできたリトルギャングが苦しんでいる
「おいお前何したんだよ、何しようとしたんだよ、言えよ」長兄と言った
「連れていって売ろうとしたんだよ」下唇の割れたリトルギャングが言った
「もっとハッキリ言えよぉ!」長兄が言った
「連れていって売ろうとしたんだよぉっ! なんか文句あるかぁっっっ!」下唇の割れたリトルギャングが言った
長兄が下唇の割れたリトルギャングの右肩を撃った
ココが長兄に飛びかかって右腕に噛み付いた
長兄がココを振り払った
「なんのつもりだココ、お前には関係ないだろう」長兄が言った
「いいえ、関係ないなんてことないわ、兄さん。私はこの人達と一緒に歌を歌って共鳴したわ。私とこの人達は仲間なの。兄さんに殺させなんてしないわ」ココが言った
これが馬鹿で無知な弱者の傷の舐め群れであってたまるか!
お前らみたいな医者はすっこんでろ!
俺たちの世界をお前になんて一生理解させない
ココが下唇の割れたリトルギャングをかばった
「兄さん、銃を収めてください。悪魔に誓って言います。私は何もされていません。この人達は私の仲間です」ココが言った
水を汲んでいた少年が家を忘れてしまった
長兄が銃を収めた
「すいません! この人達に手当てを!」ココが言った
救急箱を持った太った女が飛び出してきた
なぜ人は時として無に襲われるのか
ココが長兄の車に乗った
子供が日傘を広げた
ゴミ山に祖母を置いてきた少年が急にオルガズムに達した
ニワトリ達が卵を人間から守る
死者はどこにもいません空の反対側にいます
きっとすぐ割れる境界です
ココが助手席で外を眺めた
ココが車窓から見える人々に疎外感を覚えた
流れる私を見逃さないで
縛られて一つのところにいることでわたしはすべてを感じられない
トラクターに乗っていた男がアリを踏み殺して遊ぶ
畑に建てられた櫓で煙草を吸う
教会の鐘が鳴っても浮浪者誰も酒飲みやめない
「ココ、さっきは熱が入りすぎていた、すまん」長兄が言った
なんのつもりだ三人のリトルギャングを撃っておいて!
「大丈夫よ、兄さん」ココが言った
ココが長兄の方を向いた
少女の経血のついたリンゴが世界を見つめる
雲の分子の間を亡霊が高速移動する
牛が今日一頭で笑いながら歩いている
大羽虫が金貨を奪う
速歩き競争する子供達が楽しげだ
油壺がのぞかれたって人より何もありゃしない
二匹の野良犬が死に場所を見つけ体を重ね合う
「ねえ兄さん。兄さんは処刑人の町の浄化をどう思う?」ココが言った
「俺か? 俺は知らないよ。ハンターさんに助けられたからおれはやってるだけさ。すること全部に意味なんてないさ」長兄が言った
「そうね、いろいろ考えてしまうのは私の悪い癖かもしれないわ。為せば成るんだわ」ココが言った
「ココは再会してから変わったよな。変わった変わった。童話ばっかり見てたのにな。人は成長してくもんだなあ」長兄が言った
広場で子供達に精霊の声を聞くことのできる占い師が芝居見せた
拳銃の暴発で今日もガールフレンドが死んだ
ボーイフレンドが撃鉄下ろしてこめかみに当てて撃って後を追った




